2009 Fiscal Year Annual Research Report
行列模型による非摂動的解析に基づくAdS/CFT対応及びM理論の研究
Project/Area Number |
09J02062
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
石井 貴昭 Osaka University, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 超弦理論 / ゲージ / 重力対応 / ホログラフィックQCD |
Research Abstract |
超弦理論は素粒子の相互作用の統一理論として最も成功しているものであるが、それを通して、ゲージ理論と重力理論との間に非自明な関係が存在することが明らかになり、それは今日ではAdS/CFT対応、あるいはゲージ/重力対応として知られている。この対応関係を応用することで、扱いが難しい強結合領域のゲージ理論を曲がった時空での古典重力/弦理論での容易な解析から理解しようというアプローチが試みられている。この視点によるQCDへの取り組みはホログラフィックQCDとよばれており、特にその中でもホログラフィックQCDの最も成功した模型だと言われている酒井・杉本模型は、QCDのカイラル対称性を美しく実現し、クォーク質量が無いQCDをうまく記述している。 しかしながら、現実のクォークは零でない質量を持つ。それゆえ、酒井・杉本模型にクォーク質量を取り込むことは興味深い拡張であろう。特に、ストレンジクォークはQCDでは動的なクォークとして扱われるが約100MeVの質量があるので、現実のQCDに立ち向かうためにはストレンジクォークの質量を真摯に取り扱うべきである。 私はストレンジクォーク質量を摂動として酒井・杉本模型に含め、その最も簡単な帰結として、バリオンの質量がどれだけ変化するかを近似の最初の次数で評価した。そこには古くから知られているスカーム模型などのカイラル有効理論以上の、ホログラフィックQCDに特徴的な寄与を含まれていた。現実のQCDとの比較として、クォーク質量がゼロの場合にみられるバリオン質量の縮退が、クォーク質量を取り入れたことでどの程度解けるか評価した。その結果、酒井・杉本模型を拡張したものは定性的によい振る舞いを示していることが分かった。
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Research Products
(3 results)