Research Abstract |
本研究課題は,実験によるフォルステライトの凝縮異方性の決定,宇宙鉱物の赤外吸収スペクトル計算,すばるによる赤外分光観測,を行い,鉱物の晶癖(結晶方位に支配された形状)から宇宙鉱物微粒子(ダスト)の形成過程・条件を推定することを目的とする.初年度は,フォルステライト凝縮実験系の確立および,星周環境での最高温度凝縮物であるコランダムの凝縮異方性を求めるために,コランダムの凝縮実験を行った.これにより,凝縮時の過飽和比に応じて,凝縮するコランダムの晶癖が変化することがわかった.晶癖と赤外吸収スペクトルの関係を明らかにするために.楕円体フォルステライトの質量吸収係数の計算をこれまでに行ってきたが,楕円体近似が妥当であるかを検討する必要があった.そこで離散双極子近似法を用いて,様々な軸比をもつフォルステライト直方体の赤外吸収スペクトルを計算した.その結果,スペクトルピーク波長の絶対値のわずかな違いや相対的に強度の小さいピークが新たにみられたが,楕円体粒子の場合と同様,軸比と質量吸収係数が一対一対応し,10ミクロン帯からフォルステライト楕円体の軸比を判別できることがわかった.この結果はフォールステライトに限らず,他の鉱物にも適用できる.また,すばる望遠鏡/COMICSを用いて,ミラ型変光星R Casの空間分解・分光観測を行った.結果は現在解析中であるが,10ミクロン帯のシリケイトフィーチャーが中心星からの距離に応じて変化していること,また,ダスト分布に非対称性があることがわかった.来年度は,すばる望遠鏡による観測結果の解析および,フォルステライト凝縮実験を開始する.
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