Research Abstract |
原始惑星系円盤や進化末期の恒星から放出される高温ガスから凝縮して形成される1μm程度の固体微粒子(ダスト)は,惑星の原料物質であり,銀河における金属元素のキャリアである.また鉱物の晶癖は,その形成過程や条件を反映し変化し,赤外スペクトルの違いとして観測されうる.本研究課題は,鉱物の晶癖に着目し,実験,観測を組み合わせて,星周環境におけるダストの形成過程・条件を推定することを目的とする.隕石中に含まれるプレソーラー粒子は,太陽系のものとは大きく異なる同位体異常を示し,太陽系形成以前に進化末期の恒星周囲の質量放出風から直接凝縮して形成したと考えられている.当該年度は,星周凝縮物の晶癖を明らかにすることを目的に,プレソーラー粒子の形状解析を試みた.非平衡普通コンドライトを酸処理して取り出した酸化物粒子の中から,カソードルミネッセンス法でコランダム粒子を200粒子同定し,それぞれに対して走査型電子顕微鏡を用いて粒子形状を,EBSD分析で結晶方位を決定した.また,同定したコランダム粒子のうち98粒子の酸素同位体比分析をハワイ大のSIMS(ims-1280)を用いておこない,大きな同位体比以上を示すプレソーラー粒子を9粒子発見した.表面構造の解析および,試薬アルミナの酸溶解実験を行い,観察されたプレソーラー粒子の表面構造が宇宙空間で形成されたことを示した.次年度は,引き続き2009年度におこなったすばる望遠鏡による観測結果の解析および,凝縮実験をおこない,凝縮異方性,赤外スペクトル,プレソーラー粒子の形状を合わせてダスト形成条件の推定をおこなう予定である.
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