2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J02108
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野澤 佳世 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 構造生物学 / X線結晶構造解析 / 遺伝暗号 / 翻訳 / tRNA / クロマチン / 転写 / エピジェネティクス |
Research Abstract |
本研究員は、1年目、2年目に取り組んだ終止コドンを22番目のアミノ酸に読み替える、PylRS・tRNA^<Pyl>複合体の研究実績が評価され、今年度、栃木県宇都宮市市民賞を受賞した。さらにPylRSのプロジェクトにおいては、PylRSを用いたタンパク質工学への応用研究を東海大学北條教授との共同研究にて進めている。この研究においてはPylRSとtRNA^<Pyl>を使って任意の末端(終止コドン)にBoc基を導入したポリペプチド鎖を作り、糖鎖修飾を含む短いポリペプチドと縮合させることにより、真核生物特有の糖鎖修飾を持ったタンパク質を自在に作ることを目的としている。本年度は、真正細菌Desulfitobacterium hafniense由来PylRSで形質転換した大腸菌を用いたin vivoの経路、ならびにin vitroの経路を構築し、Boc基、Troc基を持つリジンをGSTタンパク質に導入することに成功、この成果を共著者として学術雑誌に発表した(Katayama et al.,2012)。現在、1年目に解明したPylRS・tRNA^<Pyl>複合体の構造情報をもとに、Boc基を含むより多くのアミノ酸を終止コドンに組み込めるように酵素改変を行っている。クロマチンリモデリング機構のプロジェクトでは、リモデリング因子BRG1/Brmを転写因子Fos-JunへとリクルートするBAF60aの機能性ドメインについて可用性画分に発現させることに成功した。加えて本年度は、真核生物の翻訳とカップルしたtRNA核外輸送において、核膜孔複合体上でアミノアシル化されたtRNAを核外輸送体から翻訳伸長因子に受け渡す(チャネリング機構)Cex1pの構造機能解析に成功した。本研究では、Cex1pホモログやCex1pのディスオーダー部分を除去した数十種類の変異体を作成するとともに、ultra low melting agarose gel中でゆっくりと結晶を成長させるin-gel crystallization法と表面のフレキシブルな残基に変異を導入することで結晶化のパッキングを安定化するSurface Entropy Reduction法を用いることで、出芽酵母由来Cex1pの結晶構造を2.2Åの分解能で決定した。構造解析からCex1pはキナーゼ様ドメインとhelix-loop-helixが帯状に連なったHEATリピートで構成されていることが明らかとなった。Cex1pを構成するHEATリピートはタンパク質間の相互作用に重要なモチーフであり、この領域が正電荷を帯びたパッチを形成していることがわかった。こうした構造は多くの核外受容体のtRNAの結合部位にも見られる特徴であり、Cex1p変異体を用いたtRNA結合実験(ゲルシフトアッセイ)からもその重要性が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
PylRSについては非天然アミノ酸をタンパク質に導入する技術について論文を発表し、真核生物を用いることなく、糖鎖修飾を受けたタンパク質を合成する技術が構築されつつある。また、真核生物の成熟tRNAを核から細胞質の翻訳系に輸送するCex1pの立体構造を可視化することができ、Cex1pがHEATリピートを用いてtRNAのチャネリングを行う可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
クロマチンリモデリング機構のプロジェクトについて不溶性画分に発現してしまうFos-Junを可用性画分に発現させるために、このBAF60aの機能性ドメインと共発現させることを検討しており、多くのコンポーネントを同時に発現させるために有用なMultiBacシステムの構築を検討している。クロマチンを巻き戻すBRG1/Brmについては、いくつかのコンストラクトを作成し、DNA依存型ATPアーゼの酵素活性部位の発現系の構築を大腸菌と昆虫細胞を用いて試みる予定である。
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Research Products
(3 results)