2009 Fiscal Year Annual Research Report
ウイルタ語の類型的記述にもとづくサハリンの言語接触に関する研究
Project/Area Number |
09J02110
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山田 祥子 Hokkaido University, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ウイルタ / サハリン / 記述言語学 / 危機言語 / 言語接触 |
Research Abstract |
本研究は、ツングース諸語の一つでロシア・サハリン州の先住民族ウイルタの言語であるウイルタ語の特徴を調べることにより、この地域における言語接触の影響を明らかにすることを目的とする。2009年度はウイルタ語北方言の記録と文法の記述に重点を置き、おもに以下4点を実施した。1.サハリン州ノグリキ地区に居住するウイルタ語話者をおもな対象として、語彙の収集、会話の録音、文法に関する聞き取りなどの現地調査を行った(8~9月)。この間、トナカイ飼育民の祭りの見学、近隣の先住民族であるニヴフやエヴェンキの人々との交流の機会を得、諸民族間の文化的関係についても理解を深めることができた。2.これまでの調査および先行研究から集めたデータを総合し、グロス付テキストコーパス作成を進めた。その方法については国内外の研究者と情報を交換し、データ分析支援ソフトField Linguist's Toolbox等を活用した。そして現段階のコーパスをもとにウイルタ語北方言にみられる動詞語尾について記述的に考察し、その成果を『環北太平洋の言語』15:85-100で発表した。3.国内にある資料について、北海道立北方民族博物館で調査を行った(9月、3月)。同館に収蔵されるウイルタの民具に対応する語彙と関連する文化的情報をまとめ、『北海道立北方民族博物館研究紀要』19:89-109で資料として公開した。4.言語接触に関する事例やサハリンの歴史に関する情報を収集した。その成果、および上記の現地調査で得られた文化的情報を視野に入れ、ウイルタをめぐる言語接触についての予備的な考察を『北方人文研究』3:59-75で発表した。以上4点の実績をとおして、本研究目的におけるウイルタ民族に関する文化的な情報の重要性と、より広範囲・長期間の現地調査の必要性が浮かび上がった。2010年度は、この点をとくに重視し、現地調査をより優先して研究を行う予定である。
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Research Products
(4 results)