2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J02136
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
木村 洋 Kobe University, 人文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 国木田独歩 / 正宗白鳥 / 高山樗牛 / 丁酉倫理会 |
Research Abstract |
本年度の成果は主に次の3点である。1.「牛肉と馬鈴薯」(1901)「運命論者」(1903)をはじめとした不遇期の国木田独歩の小説群と同時代の文学・言論状況の関連を探るべく調査・分析を行った。この作業によって、硯友社派の小説や家庭小説が流行した当時の文壇状況のなかでの独歩の試みの特異さが明確なものとなり、また文壇内での独歩の不遇の要因について新たな知見が得られた。その成果を日本近代文学会2009年度秋季大会(2009年10月24日)で口頭発表した。2.以上の調査と関連して、初期の正宗白鳥の文学活動について検討した。白鳥は独歩を強く意識しつつ新たな小説表現の考案に努めており、その検討は、先の作業を補うものとして重要である。調査にあたって重視したのは、日露戦争以前から騒々しい情勢を作りあげていく教育家および教育行政の動向との関わりである。この動向のなかで文学および青年を攻撃する主張が執拗に送り出されており、「何処へ」(1908)をはじめとした白鳥の新奇な小説が生まれ、注目されていく経緯は、こうした動向への文壇人たちの反発の高まりと密接に関わっていた。その点を、文学関係の記事だけではなく、『新公論』『丁酉倫理会倫理講演集』など多様な資料を考慮しつつ究明した。3.高山樗牛の1900年代初頭の評論活動の意義を明らかにするために、『太陽』『帝国文学』などの主要雑誌はもちろんのこと、教育界・哲学界・宗教界の言論にも目を配り、また『新声』『文庫』などの投書雑誌も視野に入れ、多様な資料を収集・調査した。
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Research Products
(2 results)