2009 Fiscal Year Annual Research Report
高温超伝導体Bi2212を用いたテラヘルツ波の発振機構の解明
Project/Area Number |
09J02162
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
八巻 和宏 University of Tsukuba, 大学院・数理物質科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 高温超伝導体 / 単結晶 / テラヘルツ波 |
Research Abstract |
本研究は、2007年に新たに発見された高温超伝導体Bi2212結晶構造中に内在している固有ジョセフソン接合を利用した電磁波発振現象に関するものであり、特に矩形型メサ構造の場合のテラヘルツ電磁波の発振強度とその磁場効果を実験的に詳細に調べた. 単結晶試料の酸素量、メサの幅や高さといった形状パラメータ、加工法の制御により、100を超える試料を試作し、高強度発振の実現条件を見い出した.放射分布の測定から素子全体からの発振強度を見積もると、~30μWとなり、2007年の報告に比べ、60倍という進展が見られた.高強度化の要因は、加工プロセスの改善による試料へのダメージの低減に加え、発振条件での印加電流の増大により実現された.本研究で用いた試料の発振領域での印加電流値は10~60mAであり、そのうち最大の発振強度が得られた15~20mAは、2007年の報告に比べ3倍程度大きい.また、発振領域における印加電流の変位は、2mAと20倍近く大きくなっており、強度の増強が電流-電圧特性の振る舞いからも確認された. 多様な磁束状態との関連から、電磁波発振現象に対する高温超伝導体への磁場の効果は非常に興味深い.本研究では、H<230 Oeの範囲で、発振強度、周波数の磁場依存性を評価した.発振強度は、c軸方向に磁場を印加した場合に強く抑制され、ab面内では強度変化は小さく、寧ろ磁場の領域によっては発振強度が強まる傾向がみられた.この磁場効果の異方性は2次元性の強い結晶構造や、パンケーキ磁束、ジョセフソン磁束といった磁束状態と、発振との間に強い相関があることを示唆している.発振周波数は、磁場に拠らず、ほぼ一定であった.発振強度が印加磁場強度に大きく依存することから、磁場印加により、発振強度を時間スケールで動的に制御可能であることが初めて示された.
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