2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J02169
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
澤田 宰一 Tohoku University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ACM bundle / splitting criterion |
Research Abstract |
超曲面上の算術的コーエン・マコーレー束と呼ばれるクラスのベクトル束の分裂について研究を行った。超曲面上のベクトル束について、中間次のコホモロジー群が消えているとき、そのベクトル束を算術的コーエン・マコーレー束という。分裂しているベクトル束は、定義から直ちに算術的コーエン・マコーレーであることが従う。そのため、自然な問いとしてその逆、つまり、算術的コーエン・マコーレー束ならば分裂しているか、という問題が考えられる。この問いについては、超曲面の次数が1、つまり、射影空間のときは正しいことが知られているが、次数の高い場合は一般には正しくない。そこで、超曲面の次数が高い場合について考察を行い、算術的コーエン・マコーレー束が分裂しているための十分条件として、超曲面の次元、次数、及びベクトル束の階数についての不等式を得た。特にこの結果から、算術的コーエン・マコーレーの仮定の下では、ベクトル束の階数に対して超曲面の次元が十分大きければベクトル束が分裂していることが従う。Hartshorneは射影空間上のベクトル束の分裂についてベクトル束の階数に対して射影空間の次元が十分大きければベクトル束は分裂しているであろうという予想を提出している。この予想をベクトルそのものの問題と捉えると射影空間の次元の大きさが階数の低いベクトル束の構造の単純さに関わることはしも自明ではないように思われるが、今回得られた結果は、算術的コーエン・マコーレーという大変強い仮定をおくのでもはや予想とは状況が全然異なるものの、低い階数のベクトル束の構造の単純さに超曲面の次元の大きさが関わる様子が、斉次多項式を斉次多項式の積の限られた数の和で表わすことを考えたとき、変数の数が増えれば一般の斉次多項式はそのような表示を持たないという、直感的には当たり前な命題の帰結として説明されることを示している。
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Research Products
(2 results)