2010 Fiscal Year Annual Research Report
多様な水環境に応じたダイズ個葉のガス交換関連形質の設計と評価
Project/Area Number |
09J02194
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 佑 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ダイズ / 乾物生産性 / 蒸散速度 / 乾燥抵抗性 / 気孔コンダクタンス / 干ばつ条件 / 葉面積展開 / 遺伝的変異 |
Research Abstract |
前年までの研究により、ダイズ個葉の形態には大きな遺伝的変異が存在しており、それが蒸散速度、ひいては群落レベルでの乾物生産性に寄与していることが示唆された。特に米国で育成された多収品種は気孔密度、蒸散速度、乾物生産性が高いという特徴を示した。高い蒸散速度は乾燥抵抗性とトレードオフにあることが予想される、そこで本実験では、蒸散速度の異なる日米ダイズ2品種(タチナガハ、UA-4805)に干ばつを与え、異なる水環境への適応性を個葉の蒸散に着目し評価した。 圃場に潅水区(好適条件区)および無潅水区(干ばつ区)を設置した。土壌水分含量は、干ばつ区において常に低く推移し、ダイズの生育中盤から後半にかけて干ばつ条件を与えることができたと思われた。好適区ではタチナガハに比べUA-4805では気孔コンダクタンス(gs)が高く、前年までの結果が確かめられた。干ばつ区では両品種ともgsが優位に低下したが、その低下程度には品種間差がなかった。すなわち干ばつ区においてもUA-4805はタチナガハに比べ気孔コンダクタンスを高く維持してした(図2)。このことは、UA4805は好適条件において高い蒸散速度を示しながら、干ばつ下においてもその蒸散速度を維持できていたことを意味している。タチナガハでは干ばつ条件下でも個葉面積がほとんど低下しなかたのに対し、UA-4805では個葉面積が大きく低下した(図3)。群落レベルの葉面積展開でも同様の傾向がみられた(図省略)。以上より、UA-4805は干ばつ条件下において葉面積展開を抑制する反面、個葉レベルでの蒸散速度を維持していたのに対し、タチナガハは葉面積展開を維持しようとしていたと解釈することが可能である。 本実験を通して、好適条件において蒸散速度の高い品種は、干ばつ条件においても蒸散速度を高く維持しうることが明らかとなった。すなわち、高い蒸散速度をもつ品種を育成することは、必ずしも乾燥抵抗性とのトレードオフを伴わないと考えられる。
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