2009 Fiscal Year Annual Research Report
肝癌発生過程におけるAIDによる遺伝子変異の標的領域および標的細胞の同定
Project/Area Number |
09J02208
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
遠藤 容子 Kyoto University, 医学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 肝癌 / 遺伝子変異 / Activation induced cytidine deaminase / 癌幹細胞 |
Research Abstract |
ヒトの肝発癌過程において、種々の癌関連遺伝子に生じた変異の生成・蓄積が重要な役割を果たしていることが広く知られている。我々は、DNAやRNAに変異を導入する活性を有する一群の分子(遺伝子編集酵素)に属するActivation-induced cytidine deaminase(AID)に着目した。AIDはヒト自身のDNA配列に遺伝子変異を導入することが明らかとなっており、生理的条件下では免疫グロブリン遺伝子の可変領域の体細胞突然変異に必須である。我々はAIDが、炎症や感染症の結果、ヒト肝細胞に異所性に発現誘導され、体細胞遺伝子に変異を導入することが肝癌の発生に重要な役割を果たしていることをすでに明らかにしている。ヒト肝癌由来の培養細胞株にAIDを持続発現させた結果、c-mycやp53遺伝子に変異が生じることをすでに報告しているが、正常なヒト肝細胞に炎症刺激により発現したAIDが標的とする遺伝子については全くわかっていない。各臓器や細胞に特異的なAIDの標的遺伝子が存在すると考えており、臓器特異的な発癌機序の成立に関与している可能性が示唆される。そこで、正常ヒト肝細胞におけるAIDによる遺伝子変異の標的分子を同定することにより、肝癌の発生過程に中心的な役割を果たす発癌関連遺伝子の探求を行うことを目的とし、採用第一年度目の研究を行った。まずAID発現レンチウイルスを用いて、ヒト初代肝培養細胞にAIDを持続発現させ、経時的に細胞を回収し、核酸抽出を行った。各々のサンプルは次世代シーケンサーを用いて、網羅的に塩基配列の決定を行い、コントロール群と比較することにより、AIDの恒常的な活性化の結果生じた遺伝子変異生成の全体像をとらえるとともに、AIDによる臓器特異的な標的遺伝子の探索を現在行っている。
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Research Products
(1 results)