2011 Fiscal Year Annual Research Report
肝癌発生過程におけるAIDによる遺伝子変異の標的領域および標的細胞の同定
Project/Area Number |
09J02208
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
遠藤 容子 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | AID / 肝癌 / 肝幹細胞 / 遺伝子変異 / DDB1 |
Research Abstract |
近年、"幹細胞の特徴としての多分化能と強い増殖活性を持つ癌幹細胞(cancer initiation cell)"が、癌細胞を供給する源泉であると想定されるようになってきた。しかし、癌幹細胞の由来が正常な幹細胞なのか、成熟した細胞なのかは不明であった。肝臓は自己再生能の非常に高い臓器であるが、肝細胞自身の自己増殖能で対応できないような重度の肝障害では、わずかに肝組織に存在する幹・前駆細胞が活性化し、肝再生に関与すると考えられている。しかし、肝障害時に活性化された肝幹・前駆細胞が肝発癌に果たす役割は不明である。そこで、申請者は肝幹・前駆細胞の活性化と肝発癌を一連の病態として解析可能なモデルマウスの樹立を行った。申請者が注目したのは、E3ユビキチンリガーゼ複合体を形成するDNA damage binding protein 1 (DDB1)である。p21、p27、Cdt1などの細胞周期、DNA複製に関与する基質の分解に関わる分子である。肝細胞特異的にDDB1を欠失させるマウス(DDB1F/F;Alb-Cre+/+)を作製し、肝臓の表現型の解析を行った。すると、DDBIF/F;Alb-Cre+/+マウスの肝組織ではp21蛋白の蓄積を認め、肝細胞の増殖が停止し、その結果肝再生が促され、肝前駆細胞の著しい増生を認めることが分かった。興味深いことに、48週齢を経過したDDBIF/F;Alb-Cre+/+マウスには高率に肝癌が発生することが明らかとなった。このモデルの肝組織では幹・前駆細胞の活性化を介して肝発癌を認めており、論文報告を行った(論文発表1)。現在は幹細胞から前駆細胞を経て成熟細胞へと分化する過程のどの段階の細胞で遺伝子異常が生じることが、発癌につながるのかを次世代シークセンサーを用いて網羅的に解析している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すでに一部の結果については論文発表しており、研究の目的の達成はできていると考える。さらに、この研究は肝癌幹細胞研究にさらに応用できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
この研究に用いたモデルマウスは、肝幹・前駆細胞の活性化と肝発癌を一連の病態として解析可能であると考える。そこで、現在の所属先である京都大学医学部消化器内科にマウスを米国より移送し、今後は肝障害時に活性化された肝幹・前駆細胞が肝発癌に果たす役割についての検討を行う予定ある。
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Research Products
(1 results)