2010 Fiscal Year Annual Research Report
肝癌発生過程におけるAIDによる遺伝子変異の標的領域および標的細胞の同定
Project/Area Number |
09J02208
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
遠藤 容子 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | AID / 肝癌 / 肝幹細胞 / 遺伝子変異 |
Research Abstract |
平成22年度は、留学先であるSan Diegoのバーナム研究所にて、申請書に記載した研究の目的「癌幹細胞からの肝発癌の同定」についての研究を主に行った。近年、"幹細胞の特徴としての多分化能と強い増殖活性を持つ癌幹細胞(cancer initiation cell)"が、癌細胞を供給する源泉であると想定されるようになってきた。癌組織中の数パーセントに正常な幹細胞と極めて類似した未分化な性格を有する癌幹細胞が含まれており、癌の発生源となっているものと想定されるようになってきたが、癌幹細胞の由来が正常な幹細胞なのか、成熟した細胞なのかは不明である。幹細胞から前駆細胞を経て成熟肝細胞への分化の過程のどの段階の細胞に遺伝子異常が生じることが、発癌の要因となっているかを明らかにする目的で、同研究所で保有しているDDB1 (Damaged DNA binding protein1)を肝細胞特異的にノックアウトしたマウス(DDB1^<F/F> ; Alb-Cre^<+/->)を用いて実験を行った。このモデルマウスは、肝細胞においてALBプロモーターによってDDB1が消失するにも関わらず、生後3週間目から肝細胞ではDDB1が陽性となってくる。この新たに出現したDDB1陽性肝細胞は未分化な細胞由来と考えられるが、さらに、詳しくマウスの表現型を観察すると、生後14~17か月で肝細胞癌を発生することが明らかとなり、癌細胞はすべてDDB1陽性細胞であることが判明した。つまり、正常の肝幹細胞から発生した、Albを一度も発現したことのなり未分化な肝細胞が癌化することを証明した初めてのモデルマウスである。以上のことは、論文発表、学会発表をすでに行っている。引き続き、未分化な肝細胞のどの遺伝子に変異が生じることが肝癌の発生源となりうるかについての検証を行う必要があると考えている。
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Research Products
(3 results)