2010 Fiscal Year Annual Research Report
キャピラリー電気泳動を用いるアポトーシスに関わる生命現象の解析
Project/Area Number |
09J02209
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
井上 淳司 九州大学, 工学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | アポトーシス / ゲル電気泳動 / DNA断片化 / 蛍光寿命イメージング |
Research Abstract |
近年、生物学分野の研究が急速な進展を遂げており、より短時間でかつリアルタイムに測定が行える分析機器の開発が盛んに行われている。その中でも、蛍光寿命イメージングは、蛍光物質の濃度に依存せず比較対象を必要としないため、定量分析法として利用することが可能である。これまで、開発した蛍光寿命イメージング装置を用いて細胞の早期アポトーシス判定法へと応用し、アポトーシスの進行に伴い、蛍光寿命が減少することが確認されている。本装置をアポトーシス判定法としての確立するためには、蛍光寿命減少の原因を追究することが不可欠である。本研究では、アポトーシス誘導後のDNA断片化に着目し、蛍光寿命減少との関連性について評価を行った。本実験では、スタウロスポリンをアポトーシス誘導薬として用い、RDES細胞に対して、蛍光寿命測定と断片化DNAの電気泳動を行った。1μMスタウロスポリンを投与直後の蛍光寿命は4.04nsであり、投与1時間後には3.44nsに減少し、以降3.2~3.3nsに収束した。一方、断片化DNAは、薬剤投与1時間後までは検出されず、2時間後にわずかに検出され、3時間以降に明瞭な断片化パターンが確認された。これらの結果より、蛍光寿命とDNAの断片化には相関性がなく、DNAの断片化が蛍光寿命に影響しないことが明らかとなった。先の研究から、DNA断片化より前に起こるアポトーシス過程のうち、カスパーゼ活性化、クロマチン凝縮、活性酸素種の発生については、蛍光寿命減少の原因でないことが明らかとなっていること、また、ミトコンドリアの膜電位変化が細胞核外で起こることを考慮すると、DNA分解酵素であるCADとDNAの相互作用が影響していることが示唆される。本研究結果は、蛍光寿命の減少機構を示唆するものであることから、本分析法がアポトーシス判定法として有効であることが示された。
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