2010 Fiscal Year Annual Research Report
R.M.ヘアのメタ倫理学、普遍的指令主義を基底とした道徳性の研究
Project/Area Number |
09J02216
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐藤 岳詩 北海道大学, 大学院・文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | R.M.ヘア / メタ倫理学 / 選好功利主義 / 普遍的指令主義 / エンハンスメント / スマートドラッグ |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、R.M.ヘアのメタ倫理学、普遍的指令主義を基礎として、規範倫理学、特に応用倫理学に注力して研究を行った。 また英国オックスフォード大学ウエヒロ倫理研究センター、および哲学部に留学することで、現地の研究者との対話、資料の調査、およびシンポジウム等への出席を行った。 1メタ倫理学に関する研究:ヘアが発展させた非認知主義のその後の展開の是非を論じるため、現在最先端の理論であるハイブリッド表出主義について、その特徴および問題点を検討した。またそのハイブリッド理論と対比することで、ヘアの指令主義が有していた重要性を改めて示した。これらを通じて、停滞傾向にあったメタ倫理学における非認知主義の可能性の展開が可能となった。 2規範倫理学に関する研究:選好功利主義と快楽主義的功利主義の関係を明らかにするため、英国留学を通じて、快楽主義的功利主義を主導するR.クリスプ教授との対話、および各種の研究会に参加を行った。これらを元に、これまで見過ごされていたヘアの選好功利主義の含意を、B.ウィリアムズらの理論と比較しつつ明らかにした。 3応用倫理学に関する研究:(1)R.M.ヘアの応用倫理学に関する方法論をポルノ規制に関するウィリアムズ報告、人胚実験に関するワーノック報告という実際の倫理学に基づく政策理論に当てはめて検討し、今後の応用倫理学の実践がとるべき方法を提案した。(2)人体への生化学的技術による増進的介入であるエンハンスメントと人間本性の関係について、英国のJ.サバレスク教授の指導を元に、近年の欧米での研究成果を批判的に検討した。これによって、今日軽視される傾向にある人間本性について再考を促した。(3)現在、欧米を中心に急速に発達しているスマートドラッグについて、ヘアの選好功利主義を元にその倫理的是非を検討した。これによって、今後日本において同様の問題が発生した場合に速やかな対応が可能となると考えられる。
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Research Products
(3 results)