2011 Fiscal Year Annual Research Report
音象徴語の統語と意味に関する通言語的・発達的研究:語彙的類像性の役割
Project/Area Number |
09J02238
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
秋田 喜美 大阪大学, 大学院・言語文化研究科, 講師
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Keywords | 音象徴 / オノマトペ / 擬音語・擬態語 / 類像性 / フレーム意味論 / 構文文法 / 機能言語学 / 認知言語学 |
Research Abstract |
本年度は、本課題の総括となる成果発表に加えて、その次のステップを導く複数の共同研究を始動した。 1.まず、オノマトペ(音象徴語、擬音語・擬態語)の形と意味の類似性(語彙的類像性)に階層性を想定することで、オノマトペの諸特性(統語、意味、形態、音韻、習得など)が統一的に捉えられることを、多言語の多様なデータの観察から示した。通言語的一般性を持つ本提案は、各言語内での基礎的記述に留まりがちなオノマトペ研究に対して大きな一歩となる他、今後の本研究分野に対し確固たる基盤を提供しよう。 2.次に、本研究期間の前半にカリフォルニア大学バークリー校で学んだ、「フレーム意味論」および「構文文法」という対となる理論的枠組みをオノマトペ研究に応用することにより、本研究に統一性を持たせることができた。また、そうした内容を、一般的な言語学の雑誌や専門書に寄稿する他、分野横断的な学会で講演や研究発表を行うことで、一般言語学者や更には心理学者・認知科学者に向けても、本研究の成果と意義を発信できたように思う。こうした活動は、例外視されがちなオノマトペという語類の持つ学術的意味合いを提示するというだけでなく、アカデミア全体における言語学の位置付けを考える上で、非常に意義深いものと言える。 3.最後に、本研究の次の段階として位置付けられる分野内・分野間の共同研究を開始した。オノマトペの統語と意味に関するプロジェクトでは、尚も不足しているオノマトペから言語理論への貢献をようやく真剣に講じる場として、今後の展開が強く期待できる。また、大規模データを用いた情報工学系の研究者たちとのプロジェクトでは、伝統的アプローチでは実現できなかった仮説検証や斬新な視点が次々に生まれている。何れも、本研究が基盤となりうる有望な方向性である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題が軸に据える語彙的類像性の役割について、総括的な研究成果発表を行うことができた。また、理論的な充実化を図ることができた他、分野横断的な活動に多く関わることができ、更には新たなプロジェクトへと向かうことができたため、当初の研究計画を大きく超越した一年となったと考える。
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Research Products
(16 results)