2010 Fiscal Year Annual Research Report
脂肪細胞内eNOSの発現、活性調節機構と新たな役割の解明
Project/Area Number |
09J02281
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山田 容子 東京大学, 医学部附属病院, 特別研究員(PD)
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Keywords | メタボリックシンドローム / eNOS / NASH / PPARγ |
Research Abstract |
脂肪細胞から放出される遊離脂肪酸は、Metabolic Syndrome (MetS)の基盤となるインスリン抵抗性を惹起するが、そのメカニズムは完全には解明されていない。昨年度では、脂肪細胞ではPPARγの調節のもとにeNOSが発現しており、そのeNOS由来の内因性NOは、S-ニトロシル化を介して脂肪分解を抑制することにより、Met'sの病態形成に抑制的に働いている可能性があることを報告した。本年は、脂肪分解に対する脂肪細胞内eNOS/NOの役割を、動物を用いてより生理的な作用を明らかにすることを目的とした。eNOS KOマウスならびにwild-type (WT)マウスに対し、14週間に渡って高脂肪食(HFD)負荷を行った。結果、eNOS KOではWTに比較して脂肪細胞のサイズ、体重、皮下脂肪量において著明に増加し、有意な高血糖、高TG血症、高コレステロール血症、高インスリン血症、さらにインスリン抵抗性の増悪も認めた。また、in vivoにおいてもeNOSの欠如が脂肪分解を増加させるか否かについて検討を行った。腹腔内へのイソプロテレノールの注入で脂肪分解を促進させたところ、投与前後の血清FFAの値の変化量がeNOS KOでは有意に増加しており、in vitroで確認されたeNOSの脂肪分解抑制作用がin vivoにおいても確認された。また、内臓脂肪量がeNOS KOではWTより有意に減少していたこともeNOS KOにおける脂肪分解の亢進を示唆している。また、脂肪分解において放出されたFFAは門脈を介して肝臓に流入し、沈着するため、肝臓における変化を検討した。eNOS KO(HFD)では、WTに比較して約1.5倍の肝重量の増加、肝臓内貯蓄TGの約2倍もの増加など、著明な脂肪肝への変化を認めた。また、血中のASTの上昇や肝臓組織における線維化の増加、マクロファージや炎症細胞の増加、酸化ストレスマーカーの増加などから、NASHを呈していると考えられた。以上から、eNOSの欠如により脂肪分解が亢進し、その結果としてNASHが誘導され、高インスリン血症を来すのではないかと考えられた。今後、PPARγ関連薬剤を用いて治療介入が可能であるかの検討を行う予定である。
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