2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J02300
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
田中 裕子 Waseda University, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 中央ユーラシア / 初期鉄器文化 / 青銅器文化 / 新彊ウイグル自治区 / 南シベリア / セミレチエ / 冶金 / 内蒙古 |
Research Abstract |
2009年度は、「中央ユーラシア東部における初期鉄器文化の交流」を明らかする前半段階として、地域ごとに初期の鉄器受容の様相を検討した。現地の研究所や博物館等で資料調査を行い、その成果を論文として発表した。 6月に、南シベリア地域の遺物調査を実施し、ロシアのアバカン地区博物館、ミヌシンスク地区博物館で青銅器、鉄器、銅鉄複合器の写真撮影と実測、また、周辺の遺跡踏査を行った。青銅器から鉄器へと利器の材質が変化する際の鍵となる重要な資料(鉄柄銅剣、銅柄鉄剣など)を熟覧、実測することができた。その成果をもとに、『早稲田大学文学研究科紀要』に論文を発表した。 7月には、中国北部草原地域の資料調査を行い寧夏回族自治区、甘粛省などの文物考古研究所や各地の博物館を訪れ、資料の調査や実測、周辺遺跡の踏査を行った。当地域に特徴的な銅柄鉄剣についての詳細な資料観察を行うことができた。「中国北方草原地帯における初期鉄器の受容と展開」は、本調査での成果を反映している。 また、新彊ウイグル自治区の鉄器文化について、研究の基礎となる時期区分問題に焦点を当てた研究を行い、『日本中国考古学会』でポスター発表を行った。 最終的に、各地域の鉄器受容について全体を統合する形で、中央ユーラシア東部の草原地帯における初期の鉄器をめぐる文化交渉史を明らかにしていく予定である。中央ユーラシアの初期の鉄器研究は、技術や文化の交流を考えるケーススタディとしても重要であるが、さらに鉄器の内包する生産力は、後の軍事力の強化や権力構造の出現といった社会発展への引き金ともなっている。本テーマは、草原世界での社会発展を研究していく一つの基礎研究となる意義を持つ。本年度は、南シベリア、中国北部(内蒙古・寧夏・甘粛)、新彊ウイグル自治区といった、各地域における初期鉄器文化の具体的な様相を明らかにすることができた。
|
Research Products
(4 results)