2009 Fiscal Year Annual Research Report
チタニアナノチューブの光機能を相乗したビタミンB12ハイブリッド触媒の創製
Project/Area Number |
09J02310
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田原 圭志朗 Kyushu University, 工学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ビタミンB12 / 光触媒 / 高分子 / ハイパーブランチポリマー / 酸化チタン / バイオインスパイアード / 光駆動型 |
Research Abstract |
天然のB_<12>依存性酵素は、官能基転位反応・メチル基転移反応・脱ハロゲン化反応など様々な物質変換反応を触媒することが知られている。本研究では、酵素そのものを用いるのではなく、活性中心モデル錯体と人工の代替材料を組み合わせることで、環境調和型バイオインスパイアードシステムを構築することを研究目的としている。 今回、バイオインスパイアードシステムの一つとして、ビタミンB12、多分岐高分子担体、酸化チタン光触媒からなる複合システムを構築し、紫外線を駆動力とする有機ハロゲン化物の効率的脱ハロゲン化および二量化選択性の向上を達成した。また、ビタミンB12-多分岐高分子ハイブリッドに対する基質モデルとの親和性を評価することから、本ハイブリッドが提供する触媒集積空間の効果を評価した。本研究結果は、生体を範とした次世代型物質変換システムの構築に有用な指針を与える、非常に意義深い成果である。 また、最近のエネルギー問題を鑑み、駆動力を紫外線から可視光へと発展させるため、新たなバイオインスパイアードシステムの一つとして、ビタミンB12と有機色素増感剤からなる可視光駆動型物質変換システムの構築を目指した。本システムでは、ローズベンガルを可視光増感剤(ビタミンB12へ電子を渡す電子メディエーター)として用いたところ、犠牲試薬共存下で可視光照射によりビタミンB12を還元活性化することに成功した。また、環境汚染物質であるDDTやアラクロールといった土壌残留性農薬の可視光駆動による高効率な脱ハロゲン化分解に成功した。こうして、当初の目的である「環境調和型バイオインスパイアードシステムの構築」を達成することができた。本システムは、ビタミンB12を含む生体系の電子伝達系の単純化アナロジーとして意義深いだけではなく、今後、有機ラジカル反応等の物質変換反応に応用展開できる可能性を秘めている点で非常に重要である。
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