2009 Fiscal Year Annual Research Report
柔軟植生の揺動と流れ場の相互作用およびその物質輸送に関する基礎的研究
Project/Area Number |
09J02379
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡本 隆明 Kyoto University, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 柔軟植生 / 藻波の発生メカニズム / PIV / 物質輸送 / LIF濃度計 / 流速-濃度同時計測 / LES数値解析 / 3次元構造 |
Research Abstract |
植生流れでは大規模組織渦が物質輸送を支配しているため,河川環境上,組織乱流の詳細構造を把握することが重要である.特に実河川植生は柔軟性を有しているため,流れ場が複雑となり未解明点が数多く存在する.本研究では柔軟性を有する植生流れで発生する組織揺動'藻波現象'と大規模渦の関係を解明することを目的とした.流速,植生長さなど水理条件を系統変化させて水路実験を行い,藻波現象が流れ場に与える影響について検討している.限界摩擦速度を定義することで,藻波現象を判別することができることを示した.従来の植生研究では流速計測のみを行っているが,本研究では新たに柔軟植生の揺動と流速を同時計測する手法を開発した.この手法を用いれば藻波現象を直接計測して定量評価することが可能になり,藻波の発生メカニズムを明らかにすることができる.解析結果から大規模組織渦が植生先端部を通過し,移流されることで藻波現象が発生していることがわかった. また植生流れの物質輸送構造についても実験的に検討した例が少なく,十分な知見が得られていない.そこで本研究ではレーザー蛍光誘起法(LIF)を導入し,濃度分布を計測した.濃度計測結果から植生先端部では組織渦構造が発達するため,乱流拡散が促進されることがわかった.これは既往研究が示唆していた現象を実験的に実証できたものである.またレーザー蛍光誘起法(LIF)とPIV法を併用することで,濃度分布と流速ベクトルを同時計測した.この手法によってスカラーフラックスを直接計算することが可能となり,物質輸送効率を定量評価して比較検討することができる.本研究で得られた解析データから,植生密度と物質輸送効率の関係が明らかになった.すなわち,植生密度の大きなケースではせん断層が発達して植生層内部と外部の物質交換が促進される.これに対して,植生密度の小さなケースではせん断層が発達しないため物質交換が抑制されることがわかった. 拡散現象についてはLIF実験に加えてLarge Eddy Simulation(LES)を用いた数値解析を行った.解析データから植生流れの複雑な3次元構造を有しており,組織乱流が乱流拡散現象を支配していることが解明できた.
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