2009 Fiscal Year Annual Research Report
味覚のデジタル定量化を目指したシングルセルセンサーの創製
Project/Area Number |
09J02380
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
原 圭祐 Kyoto University, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 味覚受容体 / 細胞センサー / Gタンパク質共役受容体(GPCR) / リガンドスクリーニング / 酵母 / シグナル伝達の定量化 / 細胞内情報伝達経路 / 異種タンパク質発現 |
Research Abstract |
味覚の客観的定量データの取得は難しく、人間の感覚に近い生細胞を用いた味覚センサー開発へ寄せられる期待は大きい。そこで、簡便・安価でハイスループットスクリーニング(HTS)が容易な酵母に着目し、味覚の迅速・簡便な定量化を実現する酵母味覚センサーの構築を目指して本研究を行った。 まず、刺激物質添加に応答して緑色発光を放つシグナル応答性酵母株を構築した。これにより、生細胞が実際に感じている外部刺激を迅速簡便に定量化することができるようになった。次に、酵母に内在する細胞膜受容体を味覚受容体に遺伝子置換することで、味覚受容体発現酵母を作製した。さらに、導入した苦味受容体が酵母の細胞内情報伝達経路と共役して働くように、苦味受容体と直接相互作用する酵母側のタンパク質をキメラ化した。現在、作製した酵母株のアッセイに関して改良を進めている。本研究により酵母を用いた味覚のデジタル定量化が可能となれば、従来の官能検査に代わる味の絶対的評価が実現され、バイオ味覚センサー商品化など新規ビジネスの創出にもつながると期待される。 一方、苦味受容体と相互作用する部位にランダムペプチドライブラリーを提示発現する系が構築できれば、新規苦味物質の探索や苦味物質阻害剤のスクリーニングが可能となると考えられる。そこで、酵母の細胞膜受容体とその内因性ペプチドリガンドの結合反応をモデルとして、酵母細胞膜上にペプチドリガンドを提示発現させる系を作製した。実験の結果、細胞膜上に提示したペプチドリガンドが細胞膜受容体を機能的に刺激し、酵母細胞が緑色発光を放つことが明らかとなった。今回新たに構築した本手法は、新規苦味物質や苦味阻害物質の探索に留まらず、創薬ターゲットとなるリガンド既知・未知の様々な細胞膜受容体に対して、創薬候補物質となりうる新規リガンド同定を可能とする強力なスクリーニングツールとして展開することが強く期待される。
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