2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J02385
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
本堂 茉莉 Kanazawa University, 医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | オレキシン / ヒスタミン / 脳波・筋電図 / セロトニン / アデノ随伴ウイルス / チャネルロドプシン2 |
Research Abstract |
私はこれまで、脳の視床下部に局在するオレキシン産生神経の睡眠覚醒制御機構の解明を主なテーマとして研究を行っている。オレキシン神経は、摂食行動及びエネルギー恒常性に関与する視床下部の核や、大脳辺縁系の視交叉上核や報酬系などのさまざまなシステムからの情報を受け、睡眠覚醒状態を適切に保つ役割を担っていることがこれまでに明らかとなっており、オレキシン神経を中心とした神経系の生理学的な役割を解明することは非常に重要な意義を持つことが考えられる。 本研究は、睡眠覚醒機構におけるヒスタミン神経とオレキシン神経間の役割について明らかにすることを目的とし研究を行った。ヒスタミン神経系はこれまで覚醒の維持に重要であると考えられていたが、近年、ヒスタミン1受容体(H_1R)欠損マウスの脳波・筋電図を解析した報告では顕著な睡眠覚醒機構への異常は観察されなかった。本研究においても、H_1R欠損マウスおよびH_1とオレキシン2受容体(OX_2R)の二重欠損マウスを用いて脳波・筋電図を解析したところ、正常な睡眠覚醒の表現型を示した。この結果はこれまで考えられてきたように、覚醒の維持の制御系としてヒスタミン神経系の活性化がオレキシン神経の下流として最も重要であるという仮説を否定する知見であった。すくなくとも結節乳頭体核のヒスタミン神経以外のOX_2Rの下流の系によって生理的な睡眠覚醒の制御は十分に達成できることが確認された。よって本研究は来年度より、ヒスタミン神経系以外の神経系であるセロトニン神経系をターゲットとしたオレキシン産生神経に発現する5HT1A受容体欠損マウスの睡眠覚醒行動の観察や、チャネルロドプシン2を発現するアデノ随伴ウイルスを用いて、オレキシン神経を中心とした睡眠覚醒制御機構を明らかにしていきたいと考えている。なお、5HT1A受容体欠損マウスおよびアデノ随伴ウイルスはすでに作成済みである。
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