2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J02425
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
田原 彰太郎 Waseda University, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | カント倫理学 / 道徳的判定の手続きとしての定言命法 / 「普遍化可能性」 / R.M.ヘア / 人間性の方式 |
Research Abstract |
本研究計画は、カント倫理学の中心的思想のひとつである定言命法を道徳的判定の手続きとして提示することを目的とする。この目的の下、平成21年度は以下の二つの具体的な研究を行った。(1)定言命法研究の主流である「普遍化可能性」研究を主題として取り上げ、その研究を批判的に分析し、さらにその研究とカント自身の学説・R.M.ヘアの学説とを比較検討することによって、カント倫理学研究における「普遍化可能性」研究は道徳的判定方法の構築というカント外在的な問題意識に基づいていることを明らかにした。本研究計画にとってこの研究が持つ主たる意義は、「道徳的判定の手続きとしての定言命法」という主題の下での定言命法研究の可能性が従来の「普遍化可能性」という観点からでは汲み尽されてはいないことを明らかにした点、ならびに、この主題を道徳的判定方法の探求という規範倫理学研究上のより大きな主題の中に位置づけることによって、規範倫理学研究におけるカント的アプローチという倫理学研究上の本研究の役割を明確化することが可能になった点にある。(2)定言命法のひとつの方式である「人間性の方式」の解明を行い、そのうえで目的設定と原理採用とは意志作用の二側面であるという点に着目することによって、「人間性の方式」と「普遍的法則の方式」とは二つの異なった方式なのではなく、「普遍的法則の方式」を目的という観点から再定式化したものが「人間性の方式」であるということを明らかにした。本研究計画にとってのこの研究の主たる重要性は、定言命法の一方式を解明した点、ならびに、「普遍可能性」研究と「人間性の方式」研究という現在の研究状況においては独立に営まれている二つの研究動向を、「人間性の方式」を従来の「普遍化可能性」を土台とする定言命法研究の中に組み込む視点を獲得することによって、定言命法に即した新たな道徳的判定の手続きを構築する道を開いた点にある。
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