2009 Fiscal Year Annual Research Report
リベラル・ナショナリズム論の国際秩序構想への理論的応用――国際政治理論との架橋
Project/Area Number |
09J02439
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
白川 俊介 Kyushu University, 大学院・比較社会文化学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | リベラリズム / ナショナリズム / 国際政治理論 / コスモポリタン・デモクラシー / 移民 |
Research Abstract |
本研究の目的は現代リベラリズム論の新たな理論的潮流のひとつであるリベラル・ナショナリズム論から導出される公正な多文化共生世界の構想(国際秩序構想)の輪郭を明らかにし、その知見を、国際政治学の理論との対話を試みることで、両ディシプリンの架橋可能性を探ることにある。 本年度はそのために、以下の3つのことを行った。まず、国際関係理論、特にいわゆる「英国学派」と呼ばれる議論についての文献調査・文献研究を行った。なかでもその重鎮の一人とされるアンドリュー・リンクレイターの、国境を越える民主主義の議論に焦点を当て、リベラル・ナショナリズム論の見地から批判的検討を行った。 第2に、いわゆる規範的国際関係理論において、政治哲学的な観点から国際秩序構想について議論がなされている。ただし、これは、先に述べた英国学派も含め、ネイションを超克する、すなわちコスモポリタン的な方向性が好まれる傾向が若干見受けられる(もちろん例外もあるが)。これについて、リベラル・ナショナリズム論の観点から、ネイションの規範的な意義付けを与え、コスモポリタン的ではない国際秩序構想の可能性を提示し、実は両者の議論はそこまで対立的ではないということを明らかにした。 第3には、研究計画では、平成22年度に重点的に行うとしていたが、移民の受け入れの是非について規範的な観点から論じる試みに少し取り掛かった。従来のリベラリズム論では、国境開放が理論的に支持されていたが、リベラル・ナショナリズム論という新たなリベラリズム解釈からすれば、移民の受け入れについては、ある程度制限することをリベラルな観点から是認しうることを明らかにした。 これらの研究成果をまとめたものとして、「公正な多文化共生世界の秩序像にかんする政治哲学的研究-リベラル・ナショナリズム論を手がかりに-」、(博士学位論文、平成21年度九州大学大学院比較社会文化学府提出、平成22年3月25日学位取得)を提出した。
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Research Products
(7 results)