2010 Fiscal Year Annual Research Report
社会の寛容性が個体の行動に与える影響-ニホンザル3集団の比較研究-
Project/Area Number |
09J02505
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山田 一憲 京都大学, 人間科学研究科, 講師
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Keywords | 比較行動学 / 集団間比較 / 野生動物にみられる文化 / 性格関連遺伝子 / 寛容性 / ニホンザル |
Research Abstract |
ニホンザルが示す寛容性の程度は、集団によって異なることが知られている。30年前に実施された先行研究では、淡路島集団(兵庫県洲本市に生息)は、勝山集団(岡山県真庭市に生息)と比べて、より寛容な集団であることが示されている(Koyama et al. 1981)。このような寛容性にみられる集団間変異は、ニホンザルにおける社会的な文化といえるのだろうか?もし、寛容性の集団間変異がニホンザルの文化であるならば、(1)寛容性という行動特性が次の世代へ伝達されること、(2)伝達のメカニズムが、遺伝子ではなく、社会的学習によるものである必要がある。 本研究では、第一に、勝山集団と淡路島集団を対象とした先行研究と同様の給餌実験を新たに実施し、集団間の寛容性の違いを評定した。給餌実験とは、それぞれの集団の餌場に描いた直径8mの円内に広く小麦をまき、その円の中で小麦を拾って食べたサルの頭数とその際に生じた争いに関連した音声の数をカウントする実験のことである。給餌実験の結果、淡路島集団は、勝山集団と比較して、個体の密度が高くても争いが生じにくい寛容な集団であることが明らかになった。ニホンザルの寿命は約20年であり、それぞれの集団のメンバーは30年前と全て入れ替わっている。この結果は、寛容性という行動特性が、次の世代に引き継がれていることを示している。 第二に、勝山集団と淡路島集団の間で、攻撃行動に関連する遺伝子に違いが見られるかどうかを検討した。ニホンザルにおいて多型が見られることが知られている2つの候補遺伝子に関して、勝山集団と淡路島集団の間でアリル頻度に有意な偏りが見られるかどうかを現在分析中である。
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Research Products
(13 results)