2010 Fiscal Year Annual Research Report
分子配向集積化による多糖系高分子ナノ複合界面の構造構築と機能創出
Project/Area Number |
09J02512
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
横田 慎吾 京都大学, 大学院・農学研究院, 助教
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Keywords | 濃厚ポリマーブラシ / 弱電解質ポリマー / リビングラジカル重合 / 摩擦 / 膨潤 / 原子間力顕微鏡 |
Research Abstract |
本研究では、表面開始リビングラジカル重合法によって得られる「濃厚ポリマーブラシ」に関して、糖鎖などの生体機能分子との複合化を見据えて、そのプラットフォームとして期待できる高分子電解質の高密度グラフト化を目指している。前年度は電解質型濃厚ポリマーブラシの合成について検討したが、本年度は、ブラシの表面物性(膨潤、摩擦特性)について詳細に検討した。 有機テルル化合物媒介リビングラジカル重合法をグラフト重合に応用して創製した高密度ポリメタクリル酸(PMAA)ブラシ(グラフト密度:ca.0.32chains/nm^2)について、原子間力顕微鏡(AFM)コロイドプローブ法によって、その水膨潤特性を検討した。その結果、0.1 M NaCl水溶液中ではグラフト鎖が伸びきり鎖長の90%近くも伸張していることが明らかとなった。次に、AFMを用いたマイクロトライボロジー測定を行った。対向させたブラシ間の摩擦係数(μ)の速度依存性について解析したところ、良溶媒中でのPMAAブラシ間の潤滑機構は、高ずり速度領域で発現する流体潤滑と低ずり速度領域における境界潤滑とに大別された。0.1 M NaCl水溶液中においては、μ値やそのずり速度依存性が中性ブラシと類似していた。本系では、塩添加によって解離性官能基の効果が遮蔽され、中性ブラシと同様のメカニズムで低摩擦化が達成されたと考えている(ポリマーセグメント由来の高い浸透圧、高度に伸張したコンフォメーション)。一方で、高pH条件においては、超低摩擦特性(μ~10^<-5>)が見出された。すなわち、対イオンの浸透圧効果によって、ブラシ内のグラフト鎖のより高度な伸張とブラシ表面間相相互作用のさらなる抑制が達成されたと考えられる。以上の結果は、これまで未知であった低摩擦特性などの「濃厚ブラシ効果」に対する静電相互作用の寄与を明らかにする基礎知見であるが、今後展開が期待される濃厚ブラシの機能化の観点からも有用な知見であると考えられる。
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Research Products
(6 results)