2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J02529
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
椨 康一 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 脳腫瘍 / グリオーマ / 癌幹細胞 / side population / 微小環境 / ニッチ / 細胞間相互作用 / 腫瘍血管 |
Research Abstract |
腫瘍幹細胞は治療耐性と再発に中心的な役割を担っており、効果的な治療法を開発する上で、その維持機構の解明が求められる。本年度は、ラットC6グリオーマ細胞株に存在する腫瘍幹細胞画分side population(SP)と非腫瘍幹細胞画分main population(MP)を用いて解析を行い、以下の成果を上げた。(1)SP細胞をFACSにて分離後、長期培養を行ったところ、SP細胞は短期的にMP細胞へと転換したが、その後少なくとも3週間は維持されており、MPがSPの維持に関与している可能性が示唆された。(2)そこでSPとMPを異なる割合で混合し共培養を行ったところ、MPの存在率に依存してSPの自己複製率が亢進した。(3)さらにSPとMPを混合しNOD/SCIDマウス脳内へ移植したところ、MPを同時移植した個体の予後が悪化した。(4)また、PFAで固定したMP上でSPを培養したところ有意な自己複製率の亢進が観察され、MPの膜表面リガンドあるいはMP由来の細胞外マトリックスがSPの維持を制御している可能性が示唆された。(5)cDNAマイクロアレイの結果から、MPはSPと比較してcollagen遺伝子を高く発現していた。(6)GFPを安定発現したSPをマウスに移植後形成された腫瘍において、collagenタンパク質の発現はPECAM1およびGFP陽性の血管内皮細胞近傍に観察され、腫瘍細胞自身が血管ニッチの形成に寄与している可能性が示唆された。以上の結果は、脳腫瘍幹細胞の巧妙な生存機構の一端を明らかにすると共に、腫瘍幹細胞と非腫瘍幹細胞の細胞間相互作用が治療標的の一つとなり得る可能性を示唆しており、腫瘍幹細胞を標的とした新たな治療戦略の概念を提唱できたものと考える。
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Research Products
(4 results)