2010 Fiscal Year Annual Research Report
運動後の骨格筋糖輸送促進のメカニズム解明―AS160の調節と役割
Project/Area Number |
09J02537
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
豊田 太郎 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 日本学術振興会特別研究員PD
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Keywords | 筋収縮 / Myo1c / インスリン / トランスロケーション / GLUT4 / アクチンフィラメント / 運動トレーニング / 高脂肪食 |
Research Abstract |
運動中やその後に骨格筋への糖取り込みが促進する現象は、運動の健康に対する恩恵効果を支えており、その機序の解明は疾病の予防・治療の新たな方策を提供する。刺激に応答して糖輸送担体GLUT4が細胞内部から細胞膜上に移動することが、糖取り込み促進の機序である。この機序にAkt substrate of 160 kDa (AS160)やそのホモログであるTBC1D1が、現在分かっている最下流のシグナル伝達分子として関与することを示してきた。本研究ではこれらの分子以後の、GLUT4が物理的に移動するメカニズムに、分子モータータンパク質Myo1cが関与するかを検討した。 筋肉の代謝能力は筋細胞(筋線維)の組み合わせや割合によって異なる。Myo1c発現パターンを調べたところ、骨格筋の代謝能力の高さと相関し、代謝環境の変化(運動トレーニング・高脂肪食負荷)によって発現量が増減することが明らかとなり、糖代謝に関与することが予想された。Myoloの骨格筋における機能を明らかにするため、成熟マウスの前頸骨筋に野生型あるいはモーター分子としての機能を欠損させた変異型(K111A)のMyo1c遺伝子を導入し、糖取り込み能力を測定した。野生型Myo1cを導入した骨格筋では、筋収縮やインスリン刺激に応答した糖取り込みが増大した。一方、変異型の導入は筋収縮やインスリン刺激による糖取り込みを抑制した。Myo1cの導入は、筋収縮やインスリンが引き起こすAS160およびTBC1D1までのシグナル伝達に影響しなかった。つまり、Myo1cのモーター分子としての活性は、現在確立している最下流のシグナルの次の段階あるいは、これらのシグナル伝達と独立して糖取り込みを制御していることが示唆された。以上のことより、Myo1cは筋収縮およびインスリンが引き起こす糖輸送を調節する新規の分子であることが明らかとなった。
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Research Products
(2 results)