2010 Fiscal Year Annual Research Report
揚子江に生息するスナメリの個体群動態とその変動要因の解明に関する研究
Project/Area Number |
09J02560
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木村 里子 京都大学, 情報学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 受動的音響観察手法 / クリックトレイン / エコーロケーション / イルカ / 小型鯨類 / 人為的影響評価 / 音響調査 / 密度 |
Research Abstract |
ヨウスコウスナメリNeophocaena asiaeorientalis asiaeorientalisは、中国揚子江流域固有の、スナメリ淡水性亜種である。近年個体数が激減しており、早急な保全管理が不可欠である。しかし、野生下における本種の基礎的な生態情報が不足していた。そこで、本研究では、中国揚子江に生息する小型鯨類スナメリに対し、生物の鳴音を録音して受動的にその存在や移動を観察する、受動的音響観察手法を応用して、地域個体群動態をモニタリングする手法を確立すること、生態学的知見を取得することの二点を目的とした。個体群の分断が懸念される水域を長期的に観察できる定点式音響調査、個体群内の個体分布を広域的に捉える曳航式音響調査を併用した。 定点式受動的音響観察手法を用いて、イルカが発する音(クリックトレイン)の数から密度を推定するモデルを考案し、現場水域で密度推定を行った。観察水域では、平均的に密度が低く、6月前後に密度が高くなることを明らかにした。当結果をまとめ、アメリカ音響学会誌に発表した。 曳航式受動的音響観察手法を用いて、揚子江中流域とポーヤン湖の接続域(77km)に生息する個体群を対象とし、スナメリの地域個体群内の詳細な動物の分布解明に試みた。3年半にわたる調査の結果、スナメリの分布は季節的に変化することを明らかにした。また、本種の分布を規定しうる要因として、船舶航行、掘削工事、橋梁、餌生物(魚類)の分布の4点を挙げて検討し、餌生物(魚類)影響が最も大きいことを示した。結果をまとめ、国際海産哺乳類学会誌に論文を投稿し、現在受理され印刷中である。また、国際学会で1件、国内学会で1件発表をおこなった。
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