2010 Fiscal Year Annual Research Report
繊毛虫テトラヒメナにおける核アポトーシス分子機構の解明
Project/Area Number |
09J02589
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
明松 隆彦 金沢大学, 自然システム学系, 特別研究員(PD)
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Keywords | テトラヒメナ / 繊毛虫 / アポトーシス / オートファジー / ミトコンドリア / 核膜 |
Research Abstract |
繊毛虫テトラヒメナの接合過程(有性生殖)に起こる旧大核(親世代の大核)の退化過程は、多細胞生物のアポトーシスにおける核崩壊に似た特徴がみられることから、"プログラム核死(PND)"と呼ばれ、その関連性が注目されている。PNDはミトコンドリア内在性のアポトーシス因子やリソソームの融合よって実行されるが、細胞質中に旧大核と共存している他の核(子世代の新大核と新小核)は、これらによる分解を一切受けることなく保護される。このことは、PNDが選択的な自己消化(オートファジー)のシステムによって厳密に制御されている可能性を示唆している。しかしながら、現在までに報告されている電子顕微鏡解析によれば、旧大核の表層周囲にオートファゴソーム様の膜構造が観察された例はない。そこで本年度は、PNDにおける膜系器官の動態と、選択的核崩壊を保障する分子機構を明らかにするためのアプローチを試みた。 先ず、オートファゴソームとリソソームにそれぞれ特異的な蛍光指示薬を用い、PNDにおけるオートファジー様膜動態を検出するための生細胞観察法を確立した。観察の結果、核凝縮の開始と共に靄状のMDCシグナルが旧大核表層部分に現れ、やがて核膜部分に特異的に蓄積することが明らかとなった。すなわち旧大核の核膜はPNDに際してその化学構造に何らかの修飾を生じ、オートファゴソームに相当する膜構造へ変化している可能性が高い。さらに、旧大核の核膜表層には他の核には存在しないリン脂質や糖鎖が露出しており、ミトコンドリアやリソソームの融合が核膜の修飾後に段階的に起こる様子を初めて観察した。このことから、PNDにおける旧大核の核膜の変化は、単離膜の生合成を伴わないオートファゴソーム形成であり、それに伴って露出したシグナル分子により単一細胞内での選択的核崩壊が保障されている可能性が示唆された。
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Research Products
(1 results)