2010 Fiscal Year Annual Research Report
ルネサンス期フィレンツェ東方貿易史―オスマン帝国内における毛織物取引を中心に―
Project/Area Number |
09J02601
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鴨野 洋一郎 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 中世史 / 近世史 / 国際商業史 / フィレンツェ / オスマン帝国 / 繊維工業史 / 国際情報交換 / イタリア:トルコ |
Research Abstract |
本年度においては、イタリアで調査、収集した史料および文献を利用した研究を行った。具体的には、15世紀から16世紀にかけてフィレンツェがオスマン帝国との間で行っていた貿易活動に関する詳細を検討した。フィレンツェは13世紀に国際金融業を通じてヨーロッパ・地中海世界に広く国際商業ネットワークを構築し、14世紀には毛織物工業、15世紀には絹織物工業を発展させてルネサンス運動を支える経済的基盤を準備した。フィレンツェ商人はコンパニーアや代理人制度、複式簿記、海上保険、為替手形といった様々な商業技術を駆使することによって広範なネットワークの中での経済活動を可能としていた。本研究では、フィレンツェ商人が行ったこのような活動のうち、オスマン帝国を相手として展開したフィレンツェ毛織物および絹織物の販売の諸相を分析した。オスマン帝国は15世紀半ば以降、フィレンツェが確保した重要な繊維製品の販路であった。本研究では、グワンティ毛織物会社およびセッリストーリ金箔会社という二つの会社を取り上げ、両社がオスマン帝国と持った経済的関係を、オスマン市場で販売した製品の種類、価格、顧客、販売までにかかる費用、代金徴収過程などの諸側面から検討した。そしてこれらの検討から、両社をオスマン貿易へ参入させたインセンティヴについて考察し、オスマン貿易が安定した利益をもたらすものであったとの結論を導いた。研究結果の一部は、セッリストーリ金箔会社の絹織物製造・販売およびオスマン市場との関係についてを『西洋中世研究』で、またフィレンツェ・オスマン貿易の制度的枠組みとなっていた両国間の外交関係およびフィレンツェ人領事の役割についてを『東洋文化』で公表した。
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Research Products
(2 results)