2010 Fiscal Year Annual Research Report
日本の映画興行に関する歴史的考察―テレビ産業成立以降の映画産業の可能性をめぐって
Project/Area Number |
09J02624
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
北浦 寛之 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 映画興行 / テレビ産業 / 映画館 |
Research Abstract |
本研究は、テレビ産業成立以降の1950年代から70年代において、映画興行に惹起した問題と、それに対する興行者たちの対策を解明するものであり、映画文化を支えていく、これからの興行活動に有益な視座を提供することを目的としている。 以上の研究を遂行するため、早稲田大学演劇博物館、日本大学芸術学部図書館、松竹大谷図書館などを訪れ一次言説資料の収集にあたった。また、手付かずで放置されている神戸映画資料館の膨大な資料の整理を前年から継続しておこない、その結果、これまで映画研究者が手にすることができなかった、多くの貴重な一次資料の発掘に成功した。さらに、こうした文献調査だけでなく、前年度に続き当時の映画界の状況を知る映画関係者に、聞き取り調査を実施した。 今年度は、松竹関西支社長・大角正氏から話を聞き、過去だけでなく現在の映画興行の実情についても多くを学んだ。1960年代から映画産業は衰退し始め、70年代に入ると、大手映画会社が相次いで倒産し、映画会社の経営は大きな変化を強いられることになった。その変化がどのようなもので、そして今に至るのかをということを大角氏の話を参考に、みずから調査を重ねた。その成果として、現在、「邦画5社の興行戦略-1960年代以降の斜陽化のなかで」という論文を執筆している。 また、岩波書店から執筆依頼を受け、昨年1月に提出した論文「興行者たちの挑戦-1950年代から60年代の日本の映画産業」では、今年度におこなった新たな調査情報を、改訂を重ねるなかで盛り込み、より充実した論文を書き上げた。その結果、昨年9月に刊行された『観る人、作る人、掛ける人(日本映画は生きている第3巻)』に採録された同論文は、編集委員会諸氏から高い評価を得ることができた。
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Research Products
(1 results)