2009 Fiscal Year Annual Research Report
写真黎明期から20世紀にかけてのピクトリアリズム運動における写真理論の展開
Project/Area Number |
09J02639
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
調 文明 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 視覚 / 想像力 / メディア / ピクトリアリズム / モダニズム |
Research Abstract |
平成21年度の研究では、19世紀後半のピクトリアリズム写真論(特にイギリス)における「視覚」「想像力」の問題を中心に考察した。「自然を見つめる目:一九世紀ピクトリアリズム写真論における視覚のあり方」(『美学芸術学研究28』)では、写真論における視覚の問題に注目して、H.P.ロビンソンとP.H.エマーソンにおける自然を捉える際の「目」のあり方の多様性、すなわち絵画理論の影響を受けた「教育を受けた」目(絵画的視覚)、生理学と密接に関わる人間の目(生理学的視覚)、そしてカメラの目(写真的視覚)という三つの目がときに結び付き合い、ときに反発しながら、彼らの写真論を形成していく過程を明らかにした。また、「写真と想像力--H.P.ロビンソンの写真論の展開」(表象文化論学会第4回研究発表集会)では、写真論における想像力の問題を扱った。1860年代のロビンソンは天使や最後の審判など「見えざるもの」を表現する力としての想像力の行使は絵画においては適切であるが、写真においては不適切だと考えていた。しかし、1880年代に入ると、彼は感光板の改良によって今まで目で捉えることのできなかった人間の仕草などの撮影が可能となることで、写真家の想像力がおおいに刺激されると考えるようになり、目に見えないものを表現する力としての想像力と写真とを結び付けることとなった。以上、「視覚」や「想像力」の問題はピクトリアリズム写真論と20世紀以降のモダニズム写真論とを関連付けて分析する際の比較項となるものであり、この観点から両者の狭間に位置するリンクト・リング以降のピクトリアリズム写真論を考察することで写真史に新たな観点を導入することができると考えられる。
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Research Products
(2 results)