2011 Fiscal Year Annual Research Report
非酸素発生型光合成細菌によるストロマトライト形成の検証
Project/Area Number |
09J02649
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
奥村 知世 九州大学, 大学院・比較社会文化研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | トラバーチン / ストロマトライト / シアノバクテリア / 流速条件 / 非酸素発生型光合成細菌 |
Research Abstract |
本研究の目的は、類似の縞組織をもつ先カンブリア時代のストロマトライトと現世のトラバーチン(温泉成炭酸塩堆積物)を比較し,「初期のストロマトライトが非酸素発生型光合成細菌により形成された」という仮説を立証することにある. 本年度はこれまでに行った4か所のアラゴナイト質トラバーチンの調査結果をまとめ、過去の研究例と比較し、トラバーチンの縞組織形成プロセスの一般則をまとめ上げた。 大分県長湯温泉のトラバーチンでは、流速条件の違う地点で、酸素発生型光合成細菌のシアノバクテリアが関わる2つプロセスで日周期の縞が形成されていた。流速が大きく、沈殿速度が大きい地点で発達する緻密なトラバーチンでは、シアノバクテリアは昼間表面にバイオフィルムを作る従属栄養細菌の増殖を促すことで間接的に縞の形成に関わっていた。一方、流速が小さく沈殿速度が小さい地点で発達する微生物マットに富むトラバーチンでは、シアノバクテリア昼間表面に移動してバイオフィルムを作ることで直接的に縞の形成に関わっていた。 インドネシアジャワ島のPancuran Pitu温泉、鹿児島県中央部の安楽温泉、青森県南部の古遠部温泉のアラゴナイト質トラバーチンにおいて、長湯温泉で見られた縞を作るシアノバクテリアの役割を検討したところ、流速が1m/秒以上で形成される緻密なトラバーチンでは間接的に、流速が70cm/秒以下で形成される空隙質なトラバーチンでは直接的な役割を果たしていることがわかった。また、16S rRNA遺伝子系統解析の結果、Pancuran Pituと安楽温泉から非酸素発生型光合成細菌を検出され、これらの光合成細菌も日周期の縞の形成に寄与しうることが示唆された。それに加え、従来の速度式では記述できないトラバーチンの急速な沈殿速度を、水質と流速を加味した二酸化炭素脱ガス駆動モデルによって記述できることが明らかになった。
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Research Products
(4 results)