2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J02682
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
山口 小百合 Kobe University, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 水素結合 / 超短パルスレーザー分光 / 振動ダイナミクス / 溶液 |
Research Abstract |
本研究の目的は、振動分光法により溶液中における水素結合性錯体の振動ダイナミクスを調べることで新たな側面から水素結合の性質を解明することである。本年度は新たなアプローチにより、主に2つの大きな研究成果が得られた。 まず、時間分解赤外分光法による詳細な実験の結果、水素結合性錯体の分子内高振動モードと分子間低振動モードの相関が、同一分子が水素結合した場合と異なる分子が水素結合した場合で違いがあることが分かった。この結果は、分子内または分子間における構造的な共同性が、分子構造の対称性の影響を受けることを示唆している。異なる振動モード間の相関から、水素結合性錯体のこのような性質を観測した研究はこれが初めてである。 次に、英国のイースト・アングリア大学のStephen R. Meech教授の研究室で2ヶ月にわたり共同研究することで、ラマン活性低振動モードの直接観測を行った。その結果、今までに観測されたことのない溶液中における水素結合性錯体の分子間水素結合由来の振動バンドが観測された。水素結合の振動モードを直接観測したことで、そのスペクトル線形から溶液中における水素結合の柔軟性などを示唆できた。過去に固相における水素結合性錯体の水素結合の直接観測の例はあるが、液相では初めてである。 また、第3回分子科学討論会に参加し口頭発表することで、研究成果の発信や他の参加者との議論ができた。さらに第2回HOPEミーティングに参加し、ノーベル賞受賞者やアジア圏の同世代の研究者と交流し議論することで非常に大きな刺激を受けた。
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Research Products
(3 results)