2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J02731
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
和久 希 University of Tsukuba, 大学院・人文社会科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 魏晋玄学 / 六朝文論 / 言不尽意 / 王弼 / 劉〓 / 文心雕龍 |
Research Abstract |
本研究課題のうち、平成21年度は主に魏晋玄学から六朝文論へ至る言語思想の展開について資料調査・整理・検討を行い、研究成果を発表してきた。「言不尽意(言は意を尽くさず)」というのは、『周易』繋辞上伝を根拠とする思想的立場である。魏晋期には「言尽意」「言不尽意」双方の立場が見られたものの、時代的風潮としては、「言不尽意」であるとする伝統的立場が優勢であった。これに対し、魏の王弼『周易略例』は、「言」と「意」との中間に「象」を挿入することによって、「意」を卦象という体系において捉えようとした。これは、「言不尽意」を前提としながらも、言語以上のところを、言語とは別の知的な構造において把捉しようとするものであった。本研究では、かかる言語思想の六朝期への展開を、六朝文論に求めた。とりわけ、王弼同様の問題関心が劉〓『文心雕龍』に見えていることに着目し、論じてきた。劉〓は『文心雕龍』隠秀篇で「隠」を「文外の重旨」とする。そしてそれを「珠玉」や「互体」の例えによって述べる。この「隠」すなわち「文外の重旨」は、従来、言外の含蓄や余韻として理解されてきた。本研究では、劉〓が立脚する先秦から漢魏以降に至る資料的堆積についてあらためて調査、検討を行い、劉〓が「隠」を『周易』の爻操作である「互体」と同様の構造的なものとして見ていたことを導いた。すなわち、劉〓の思索とは、言語を超えつつ、それとは別の何らかの理知的な構造・構想において「文外」を捉えようとするものであった。以上の内容については文献調査と並行して、複数の全国学会での口頭発表およびその他のシンポジウム、研究会において継続的に口頭発表を行っており、また、その統合的成果としての論文を全国学会誌に投稿中である。これに加え、報告者は六朝期文論について、言語思想や音韻論的観点からの分析を進めており、さらなる研究成果として、論文および訳注の準備中である。
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Research Products
(2 results)