2009 Fiscal Year Annual Research Report
スピンフラストレーション系における磁性と誘電性の交差相関の研究
Project/Area Number |
09J02745
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
中島 多朗 Tokyo University of Science, 理学研究科, 特別研究員(DC-2)
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Keywords | スピンフラストレーション / マルチフェロイック / 三角格子反強磁性体 / 中性子散乱 |
Research Abstract |
本研究では「スピンフラストレーション系における磁性と誘電性の交差相関の起源を実験的なアプローチから解明する事」を目的として、特に近年その磁性と誘電性の共存が注目を集めている三角格子反強磁性体CuFeO_2についての実験を行ってきた。CuFeO_2は基底状態から結晶のc軸方向に磁場を加える事により現れる第一磁場誘起相において強誘電性を発現するMultiferroic物質であり、その強誘電相の磁気構造については我々のグループが2007年に「プロパースクリュー型」の磁気構造である事を提案した。しかしながら、微視的理論と比較してこの系の磁気誘起強誘電性の起源を議論するためには、この時点での磁気構造解析の精度は不十分であった。そこで、本研究では4軸中性子回折と三次元中性子偏極解析という二つの手法を相補的に用いた精密磁気構造解析を行い、この系の強誘電相の磁気構造が確かにらせん軸を[110]方向に向けたプロパースクリュー型の構造である事を実験的に示した。これにより、この系の強誘電性の微視的起源は、代表的Multiferroic物質であるTbMnO_3などで成功を収めた「Spin-current model(P∝e_<ij>×(S_i×S_j))」ではなく、2007年にArimaによって提示された「d-p hybridization model」によって良く説明される事を実験的に示すことができた。この成果は、これまで「スピンが誘起する強誘電分極」の微視的起源として確立されていた二つのモデル、「交換磁歪モデル」「Spin-current model」に続いて、この「d-p hybridization model」が第三のモデルとして位置づけられる事を実験的に示すものであり、今後のスピンによって駆動される強誘電性の研究に新たな道を開く物になると期待される。この他にも、本研究では、この系の強誘電性に対して不純物置換や外部磁場の印加がどのような影響を与えるかを、中性子散乱と焦電測定を中心とした実験手法により詳細に探査し、論文として発表した。
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Research Products
(15 results)