2009 Fiscal Year Annual Research Report
東アフリカ沿岸部における民衆のイスラーム―「預言者の医学」の実践をめぐって
Project/Area Number |
09J02749
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤井 千晶 Kyoto University, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 預言者の医学 / 東アフリカ沿岸部 / 民衆のイスラーム / スワヒリ地域 / インド洋海域世界 |
Research Abstract |
今年度は、3本の論文発表と4本の口頭発表を行い、研究内容をブラッシュアップし、最大の成果である博士論文「東アフリカ沿岸部における「スンナの医学』-イスラームをめぐる伝統と改革-」をまとめることができた(2010年3月、京都大学に提出)。博士論文では、これまで研究蓄積の少ない東アフリカ沿岸部の人々のイスラーム実践に着目した。そして、フィールド(タンザニア)と文献にもとづいた調査から、「スンナ(預言者の言行)の医学」という事例を切り口として、東アフリカ沿岸部のイスラーム復興現象を考察した。その結果、イスラーム改革主義者が「伝統的治療」として批判の対象としている実践を改革し、「スンナの医学」として自らが治療者として実践していることを示した。また、スンナの医学は、メディアやイスラームの授業でも取り上げられるなど、現在では多くの人々の支持を集めていることが分かり、その実践内容を検証することで、クルアーンと預言者言行録を重視するという、人々の持っ「正しいイスラーム像」を明らかにした。 本研究の意義は、これまで歴史学研究や文献研究の分野から、宗教的エリートに着目して描かれてきた東アフリカ沿岸部のイスラーム復興現象を、現在の人々のイスラーム実践を考察することで明らかにした点である。また、歴史的に構築されたインド洋海域世界における人的・物的ネットワークに加え、メディアを通したイスラーム世界との関係の重要性を再確認することができ、今後、研究を発展させる上での多くの着想を得ることもできた。
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Research Products
(7 results)