2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J02750
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
兎田 幸司 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 動機づけ / 報酬 / 価値 / 前部帯状皮質 / 内側前頭葉 / オペラント条件づけ / 単一ニューロン活動記録 / サル |
Research Abstract |
行動の結果としてもたらされる報酬の情報を正確に認識する能力は、動物が生存していくで不可欠な認知機能である。これまでの研究により、前頭葉の内側部に位置する前部帯状皮質という領域が、「報酬の予測」や「動機づけ」に重要な役割を果たしていることが示唆されてきたが(Shidara&Richmond,2002)、(1)前部帯状皮質の領域内に機能差が存在するのか、(2)「報酬の近さ」や「報酬の量」についての情報がこの領域においてどのように処理されているのかは未だ明らかにされていなかった。本研究においては,「報酬の近さ」と「報酬量」を操作した視覚弁別課題をサルに訓練し、課題遂行中のサルの前部帯状皮質吻側部から単一ニューロン活動を記録することを通じて、この領域の報酬の情報処理における役割について検討を行った。前年度には、2頭のアカゲザル(Macaca mulatta)に対して、「報酬獲得までの試行数」と「報酬の量」の2条件を操作した視覚弁別課題を訓練し、この課題を遂行中のサル1頭の前部帯状皮質吻側部から単一ニューロン活動を記録した。本年度は残るもう1頭のサルからも同様の記録実験を行い、結果の信頼性を確認した。また、2頭のサルから得られた実験結果を詳細に解析することにより、前部帯状皮質の吻側部においては、(1)「報酬の量」についての情報よりも「報酬の近さ」 についての情報処理が主に担われていること、(2)報酬が近づくにつれて活動を減少させるニューロンが多く存在し、報酬の情報を示すキューの提示後に活動のピークを示すニューロンが多く存在すること、(3)キューが報酬についての情報を示す条件と示さない条件でニューロンの活動パターンが変化することを明らかにした。こうした結果から、前部帯状皮質の吻側部は現在の状態の把握に関わっていることが考えられ、尾側部とは異なった情報処理を行っている可能性があることが明らかになった。
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