2009 Fiscal Year Annual Research Report
英語構文体系のダイナミズム ―名詞と動詞の相関から見た構文現象―
Project/Area Number |
09J02789
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
土屋 智見 (年岡 智見) Kyoto University, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 英語学 / 認知言語学 / 構文 / フレーム / 品詞 / 文法機能 |
Research Abstract |
本研究の最終的な目標は、英語構文体系の解明である。この目標の達成のため、本研究は、従来の構文研究における動詞中心主義の脱退を目指し、「名詞」の意味的・統語的振舞いに着目することで、構文現象の捉え直しを行っている。特に本年度は、名詞が担う文法機能の一つである「目的語」の数・種類に焦点を定め、商業取引フレームを喚起する言語表現(特に支払い・請求の事態を表す言語表現)を中心に、意味と統語の相関を探った。分析の結果、主に以下の4点が判明した。1.表される意味が限定(特定化)されると、取れる統語パターンも限定される傾向にある。2.目的語に生起する名詞の数・種類(他動詞構文なのか二重目的語構文なのか。他動詞構文の場合、人なのか金銭なのか。)によって、共起する副詞的用法のto不定詞の解釈(意味上の主語の解釈)が異なる。3.名詞の喚起する意味フレームのおかげで、その単語を動詞として用いることが可能になる。4.具体的な金額を表す名詞は、副詞的性質を有し、目的語としてのステータスが低い。1-4の理論的含意は各々、以下の5-8に集約される。5.意味の特殊性・一般性と統語の特殊性・一般性の間には、ある種の相関関係が認められる。6.項構造構文のようなハイレベルな構文だけでなく、to不定詞を含み目的語の数・種類が特定されたローレベルな構文も想定し、両者の相互作用を考慮に入れる必要がある。7.名詞の喚起する意味フレームと構文に関する知識が、名詞と動詞のつながりを可能にし、ひいては言語の創造性に寄与する。8.本研究が示した名詞と副詞のつながりの一端は、品詞の解体および再考へとつながる可能性を秘めている。最後に、本研究は、構文文法とフレーム意味論の理論的融合に向けて一歩踏み出したと言えるだろう。
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Research Products
(3 results)