2010 Fiscal Year Annual Research Report
英語構文体系のダイナミズム ―名詞と動詞の相関から見た構文現象―
Project/Area Number |
09J02789
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
土屋 智見 (年岡 智見) 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 英語学 / 認知言語学 / 構文文法 / フレーム意味論 |
Research Abstract |
本研究の最終的な目標は、英語構文体系(及びその背景にあるメカニズム)の解明である。この目標の達成に向けて、本研究は従来の構文研究における動詞中心主義の脱退を目指し、「名詞」の意味的・統語的振る舞いに着目することで、構文現象の捉え直しを行っている。前年度は、特に名詞が担う文法機能のひとつである「目的語」に焦点を当てて分析を行ったが、本年度は目的語に限らず、その他の文法機能(例えば補語や修飾語)にも注目し、意味と統語の相関を探った。本年度の研究内容は主に以下の2つに大別される。 1.構文間の関係に対する構文観の変換2.名詞という品詞と目的語・補語などという文法機能との関係の考察1に関して言うと、構文各々の自律的な存在を前提とする従来の構文観を疑問視し、構文同士が揺らぎながら重なり合い全体としてまとまった体系を形成するとする構文観を提示した。この際、特に注目したのが[S+V+NP1+NP2]という形式がSVOOとSVOCのどちらにも解釈可能な言語事実である。さらに、構文の横のつながりに加えて、縦のつながり(抽象・具体の関係)を考慮に入れて、「構文の円錐モデル」を提案した。この円錐モデルでは、様々な抽象度の構文を包括的に扱うことができる。2に関して言うと、動詞の後に現れる「具体的数値を表す名詞」(特に金額)が副詞的性質を併せ持つことを明らかにした。通常、動詞の(直接)目的語としてみなされて来た名詞句が、疑問詞の種類・与格交替の可能性・受身の主語の選択などを観察すると、実は純粋な目的語ではなく、副詞(連用修飾語)としての性質を持っていることが分かる。これは、数値(特に金銭)に関するフレーム意味論的知識の反映であると考えられる。 本研究は、所謂5文型の限界を示し、構文研究における「動詞の意味論」ならぬ「名詞の意味論」を展開し、構文文車法とフレーム意味論の理論的融合に向けて、発展の途にある。
|
Research Products
(3 results)