2010 Fiscal Year Annual Research Report
心筋組織修復・再生過程における生体内での組織幹細胞動態研究
Project/Area Number |
09J02800
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岩倉 智彦 大阪大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | STAT3 / 血管新生 / IL-6 / 幹細胞 / 心筋梗塞 |
Research Abstract |
近年、心筋組織内に存在する幹細胞が、心筋細胞や血管内皮細胞などへの分化能を有することが報告されている。これまでに我々はinterleukin (IL)-6ファミリーサイトカインがgp130/STAT3シグナルを介し、Sca-1陽性心筋組織幹細胞の血管内皮細胞分化を誘導することを明らかにしてきた。本研究は、内皮細胞分化機構を解明することを目的とした。まず、DNAアレイにより、Sca-1陽性細胞においてセリン・スレオニンキナーゼであるPim-1がLIF刺激後、発現誘導されることを見出した。培養心筋組織幹細胞において、抑制型STAT3遺伝子導入による、あるいは、STAT3遺伝子のノックアウトによるSTAT3の機能阻害は、LIFによるPim-1の発現を有意に抑制した。さらに抑制型Pim-1遺伝子を導入することにより、HFによる培養Sca-1陽性細胞の血管内皮細胞への分化が有意に抑制された。次に、前年度に引き続き、マウス心筋梗塞モデルを用いた検討を行った。梗塞巣に移植されたSca-1陽性細胞の血管内皮細胞への分化効率は、野生型STAT3遺伝子を導入することにより有意に上昇したが、STAT3遺伝子のノックアウトまたは抑制型Pim-1遺伝子の導入により有意に減少した。以上のことから、心筋組織の修復・再生過程では、IL-6ファミリーサイトカインによるSTAT3/Pim-1シグナルの活性化が心筋組織幹細胞を血管内皮細胞へと分化誘導し、新規血管形成を促進する可能性が示唆された。本研究結果は、gp130/STAT3シグナルをターゲットとした、サイトカインによる新規血管新生療法の確立を支持するものであり、非常に意義深いと考えられる。
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Research Products
(2 results)