Research Abstract |
精神疾患による休職者の増加や(日本生産性本部,2009),職場で最も多い疾患はうつ病であることから(丹下・横山,2007),うつ病による休職者の対策が必要とされている。うつ病に対する精神療法は認知行動療法が推奨され(NICE,2009),うつ症状との関連について検討されてきた。一方,職場復帰支援の指標である社会機能は,うつ症状の改善の後に回復することが指摘されているが(Hirschfeld et al.,2002),休職中に測定された社会機能は,日常生活を送る基本的な能力であり,職場復帰に直結する内容は含まない。したがって,うつ病休職者の職場復帰支援においては,このような日常生活における社会機能の回復の測定に加え,直接的に職場復帰と関連すると考えられる職場復帰の困難感を評価する必要がある。そこで本研究ではうつ病休職者を対象に,(1)「うつ症状」の改善,(2)日常生活で必要とされる「社会機能」の回復,(3)職場復帰の際に感じる困難感である「職場復帰の困難感」の低減を,職場復帰に向けた3つの回復段階と仮定し,各段階における認知行動的要因との関連について検討を行った。 その結果,認知行動療法は本研究で仮定された3つの回復段階のうち,(1)「うつ症状」,(2)日常生活で必要とされる「社会機能」に対して改善効果があるものの,(3)「職場復帰の困難感」には介入効果がないという効用と限界が示された。今後の展望として,本研究で開発された「職場復帰の困難感」尺度を利用して,休職者が職場復帰において困難を感じている内容を同定し,それにあわせた介入とその後の変化を評価することによって,職場復帰を直接的に支援する取り組みが必要であることが考察された。
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