2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J02845
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
太田 由佳 Kyoto University, 大学院・人間・環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 松岡恕庵 / 本草学 / 博物学 / 儒学 / 神道 / 医学 / 近世日本 |
Research Abstract |
本年度は、本研究の主題である本草学者松岡恕庵(玄達、1668-1746)について、まず計263点に及ぶ著作関連資料の網羅的な書誌調査をほぼ終え、その目録を完成させた。これによって、本草学のみならず儒学、医学、神道また有職故実にまで及ぶ広範なその学問の大要を初めて明らかにし得た。同時に、著作資料の序跋、奥書、旧蔵者など、目録作成作業に付随して得られる書誌的知見から、恕庵を取り巻いていた門人・交流関係をも明らかにした。なかでも、師である稲若水(本草家)のほか、壼井義知(故実家)、玉木正英(神道家)、並河天民(儒医)、また谷川士清(神道家・国学者)など、近世日本の学術史上に重大な事績を遺す知識人らと恕庵とが、互いの蔵書や専門知識を遣り取りしていたという事実は、彼らの学問が相互に影響し合いながら存立していたことを示唆するという意味で、極めて重要である。この延長として、恕庵の言説のうちに関係知識人(特に山崎闇斎や伊藤仁斎など儒学の師を始めとする)からの影響がどれほど見られるかという検証を、主に序跋文について進めている。この他、具体的な著作資料の解読・分析としては、日本初の「苔」類専書である「怡顔斎苔品」(写本、成年未詳)について、別に伝わる「海苔品」(写本、国会図書館本・狩野文庫本の2本あり)がその前段階にある著述であることを、序文・奥書・記載内容の比較検討によって明らかにした。併せて、本書の特色が、日中の先行本草書において主に「菜」として扱われてきたノリなどの藻類と、主に「草」として扱われてきたコケ植物(あるいはそれに類する草本)とを、「苔」の名の下に併せて収載する点にあるとの見解を得た。
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Research Products
(2 results)