2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J02937
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
久保 瑞日 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 家庭教育 / フランス / 19世紀 / 雑誌 |
Research Abstract |
本研究は、19世紀末フランスにおける家庭教育像を、雑誌メディアを史料して考察したものである。19世紀末、すなわち第三共和政期前半は、近代公教育体制が成立すると同時に、女性誌や家庭誌等の日常生活に密着した雑誌メディアを通じて、家庭教育をめぐる規範やイメージが量産された時代である。学校教育と家庭教育が急速に大衆化の道を歩んだ当時の家庭教育像を考察することは、家庭の教育役割が問い直される昨今の社会状況を再考し、家庭教育の今後を探るための糸口となると考える。本研究では、共和主義的な立場に立った家族向け週刊誌『ラ・ファミーユ』La Famille(1879-1921)と保守ブルジョワ的な色彩が強く、女性向けメディアの中では最多の発行部数を誇っていた家庭誌『ル・プチ・エコー・ド・ラ・モード』Le Petit Echodela Mode (1879-1983)の二誌を主な分析対象とした。ここから明らかになったのは、以下の二点である。第一に、学校教育の対概念としての家庭教育のあり方が語られるようになる中、それに伴って、母親の愛情に特徴づけられる家庭教育イメージが広範に流通したことである。第二に、前史においてカトリック教会の影響を顕著に受けていた女子教育については、女子中等教育の公教育化という制度的転換を契機として、それまで家庭教育を自明としなかった下位階層にそれを広めようとする動きがあったことである。本研究は、公教育成立期の家庭教育た光を当てたという点で、従来の教育史研究が学校教育に傾倒しがちであったという研究状況を一歩進めたと言える。
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Research Products
(2 results)