2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J02937
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
久保 瑞日 Kyoto University, 大学院・人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 「家庭教育」 / 家族誌(家庭誌) / ブルジョワジー |
Research Abstract |
第一に、近代フランスにおけるプレス・ファミリアル(家庭誌、家族誌)の系譜を探ることを通して、famille家族/家庭という概念が、当時の雑誌メディアにおいてどのように表出しているかを考察した。その結果、familleを掲げた雑誌には家族向け読み物雑誌と女性向け家庭誌の二つの系譜があることが明ちかになった。前者は、家族構成員それぞれに読まれることを意図し、父・母・子の親密性を礼賛している。一方後者は、女性の生活空間であった家庭を中心軸に据え、その実用化や合理化に役立つ情報を提供することを目的とした。第二に、週刊誌『ル・プチ・エコー・ド・ラ・モード』(以下、『プチ・エコー』)における「家庭教育」像の分析を行った。その結果、公教育体制成立期である19世紀末において、当時多数の発行部数を誇った家庭誌『プチ・エコー』では、母親による娘の「家庭教育」が盛んに奨励されていることが明らかとなった。そこでは、娘に「一家の女主人」としての自覚と「服従」の精神を持たせるための徳育が何においても重視された。また、学校教育は知育を補完する存在にすぎず、「あってもなくても良いもの」であったのである。同時に、そうした「家庭教育」観の背後には、娘の結婚により家格の維持・上昇を図ろうとする中・小ブルジョワジー特有の階層意識、「一家の女主人」が采配する場としてのfamille家族/家庭認識が垣間見えるのである。 以上を通して、中・小ブルジョワジーの「家庭教育」像とともに、それをプレス・ファミリアルを史料として考察することの意義を明らかにしたのである。
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Research Products
(1 results)