2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J02956
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
芳澤 元 大阪大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 室町文化 / 応永年間 / 渡唐天神説話 / 班女説話 / 芳春院 / 本光国師日記 / 連歌会席 / 五山禅林 |
Research Abstract |
本研究では、中世史研究と禅宗史とくに五山文学研究を有機的に結合すべく、漢詩と絵画の二つの情報をもつ渡唐天神説話を中心に、禅林文芸の展開について考察する。今年度の研究概要は以下のとおりである。(1)史料調査では、前年度から渡唐天神像賛・禅僧の束帯天神像賛などの詩文・語録史料を対象とし、今後も新出資料は想定されるが、収集データは約200件を上回った。とくに今年度は未翻刻文献だけでなく個人蒐集家を訪ね未紹介絵画も収集できた。更に既刊史料や入力済データのうち、文意不通や疑問のある場合は関係諸機関で原本確認を行った。また調査により、現存最古とされた渡唐天神像が模写で所蔵先にも誤りを発見した。同説話の年代を議論する上で重大な問題点である。上記(1)をふまえ、(2)応永年間の渡唐天神像の展開を、同時代画像や関連文献とくに難解な五山側史料を積極的に読みとき、当時の室町殿や守護・五山での贈答・交流を社会構造・具体的場面に即して論じた(投稿中)。同説話は多分野で論及されるが、その性格や本質論はまちまちで分野間は交差していない。そこで本研究は(1)のデータに基づき、詩のモチーフ分類・数値化により、客観的視点から拡散した議論の整理を図り、連歌会席での渡唐天神像の機能論も加えてその展開を考察した。なお2010年末には日本史研究会(京都)にて、室町期に増える五山への社会的な作詩依頼の構造について、歌人・時衆・都市民等との関係や文芸空間とからめ口頭報告した。(3)昨年3月末の報告を論文化した(掲載決定)。慶長年間の女人図の製作過程について、會津八一記念博物館等での調査をふまえ分析し、大徳寺三長老から以心崇伝・足利学校岸主に到る着賛過程を克明に復元し、中近世移行期の禅林や社会情勢との関連性、室町文芸との連続性を論じた。また中世禅僧の熊野参詣史料についても発表予定である。
|
Research Products
(4 results)