2011 Fiscal Year Annual Research Report
木材の老化機構の解明とその応用―古材の材質変化の解析―
Project/Area Number |
09J02994
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松尾 美幸 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 古材 / 熱処理 / 経年変化 / 材質評価 / 反応速度論 |
Research Abstract |
これまでに、ヒノキ材の経年および熱処理に伴う色変化に対して反応速度論的解析を適用することに成功し、経年に伴う色変化は基本的に熱酸化反応として説明できるとの結論を得ている。また、熱処理に伴うセルロースろ紙の色変化から、セルロースの色変化が木材の色変化にある程度寄与していることを明らかにしている。本年度は、木材、紙、セルロースろ紙の経年および熱処理に伴う色変化を統一的に考察することによって、これら材料の老化機構の解明とその応用を目指し、以下のことを行った。 1.ケヤキおよびスギ現生材を90、120、150、および180℃で熱処理し、色変化たついて反応速度論的に解析した。処理温度による色みの変化の違いを考慮した解析法を適用し、複雑な傾向を示す色変化に温度一時間換算則を適用することに成功した。これにより、上記の温度範囲において、任意の温度・時間での色変化を予測できるようになった。 2.昨年度に加え、新たに3点のケヤキ古材について放射性炭素年代法により年代を測定し、物性試験に供した。ヒノキ材と同様に、経年に伴う色変化と熱処理に伴う色変化から予測される常温での変化とを比較したところ、実際の経年では予測よりも速く色が変化することがわかった。このことから、ケヤキ材の経年に伴う色変化はヒノキ材とは異なり熱酸化反応のみでは説明できないことが示唆された。 3.書画用紙(宣紙)を90~180℃で熱処理し、その色変化を反応速度論的に解析することができた。これにより、上記の温度範囲において、任意の温度・時間での色変化を予測できるようになった。また、宣紙の色変化はほぼセルロースの色変化によることがわかった。経年した宣紙は、熱処理宣紙と同様の色を示すことが確認されたが、傾向を把握するためにはさらに試料数を増やす必要がある。
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Research Products
(7 results)