2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J03000
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡 研吾 Kyoto University, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 強誘電体 / 圧電体 / ペロブスカイト / 高圧合成 / 低次元磁性 / 非鉛 / ビスマス |
Research Abstract |
新奇な元素選択による非鉛系強誘電・圧電材料の探索を目的として研究を行った。6S^2孤立電子対を持つPb^<2+>及びBi^<3+>のイオンを持つペロブスカイトでは、その立体障害により強誘電歪みを持つ結晶構造が安定化される。こうしたペロブスカイト型酸化物の結晶学的特徴とその歪んだ構造に起因する物性を明らかにすることは、新規非鉛強誘電・圧電材料の物質探索における指針を見いだす上で非常に意義深い。 本研究では、高圧法で合成されるPb,Biペロブスカイトの中でも正方晶の結晶構造を持つPbVO_3とBiCoO_3に注目し、研究を行った。これらは代表的な強誘電体であるPbTiO_3と同様の結晶構造を持つが、その構造歪みの大きさはPbTiO_3を大きく上回る。高圧下における水熱法によりPbVO_3の純良な試料の合成に成功し、その試料を用いた詳細な磁性研究を行った。その結果、PbVO_3がd電子の軌道秩序による2次元磁性を示すことを明らかにし、軌道秩序がPbVO_3及びBiCoO_3の巨大な正方晶歪みの安定化に寄与していると説明づけた。また、自ら改造した二段式超高圧発生装置を用いて、新しいペロブスカイト化合物PbMnO_3を合成した。構造解析を行い、d^3電子配置を持つMn^<4+>では軌道秩序によってd軌道の縮退を解くことが出来ないため、大きな正方晶歪みは発現しない事を示した。さらに、BiCoO_3の圧力下における構造相転移の研究から、高圧高温条件下でBiCoO_3が常誘電構造に転移することを明らかにし、その際にCo^<3+>のスピン状態も変化していることを示した。また、BiCoO_3-BiFeO_3固溶系の研究を行い、実用材料であるPZTと共通の構造的特徴を持つことから、環境に有害な鉛を含まない圧電体としての応用の可能性も検討した。
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