Research Abstract |
本研究は,手袋をしないまま素手で処置をするといった看護業務における違反行動が起こる発生メカニズムの解明と違反行動の防止に資する安全教育の提案を目的としている。 発生メカニズムの解明においては,違反への態度に注目した。昨年度は,Implicit Association Test(以下,IAT)と呼ばれる反応課題の様相をとった既存の手法を利用し,看護場面の違反への態度を測定するIAT(以下,看護IAT)を作成した。そして,医学部看護学科の大学生約70名を対象に看護IATを実施することで,ツールとしての妥当性と信頼性を検証した。本年度は,現役看護師(リスクマネジャーを兼任する管理職位)約40名,現役看護師(スタッフ職位)約60名を対象に看護IATを実施し,ツールとしての妥当性と信頼性を検証した。本年度は,安全に関わる委員会経験の有無,インシデント報告数や上司評価等を新たに指標として加えた妥当性の検証も行った。その結果,反応時間およびクロンバックのα係数から,一定の妥当性と信頼性が示唆された。また,安全に関わる委員会経験があると違反への「不快さ」が強いことが示され,この点からも妥当性が支持された。同対象者には,看護IATと同時に質問紙調査も行った。それらを通じて,違反への「不快さ」が強いという態度を有する場合は,違反敢行意図が低く,違反を危険だと感じるリスク評価が高い可能性が示唆される等,違反発生メカニズムにおける態度,リスク評価,ベネフィット評価,敢行意図の重要性ならびにこれらの関連が明らかにされた。 安全教育に関しては,昨年度に実施した"病院で看護師が受講する安全教育の実態把握を目的とした聞き取り調査"の結果と,違反行動発生メカニズムの解明に関する上記の研究結果を踏まえ,素手で処置する等の違反行動を題材とし,何故その行動が危険であるか等を数人で話し合うグループワーク型の取り組みを提案し,現役看護師約60名を対象に,違反を要素に取り入れた安全教育を試行した。
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