Research Abstract |
アラメチシン(Alm)は,非タンパク質構成アミノ酸であるα-aminoisobutyric acid(Aib)を含むペプチドであり,電圧をかけると数分子が会合して膜にチャネルを形成する。そのチャネル電流は,数ms間に複数のレベルに変化し,一定の値を示さない。これは,Alm分子が離合集散を繰り返し,チャネルポアの大きさが変化するためと考えられている。本研究では,Aibを含まず安定なチャネルを形成するペプチドの創製および外部刺激に応じて電流が変化する人工イオンチャネルの創製を目的とする。今年度は,ペプチド分子の疎水性とチャネルの安定性に関する知見を得るため,Almに含まれるAibをα-aminobutyric acid(Abu)で置換したAlm-Abuと,Leuで置換したAlm-dULを作製し,チャネル電流の比較を行った。その結果,Alm-AbuはAlm-dULと比較して3-5倍程度,場合によっては10倍程度開口時間が長いチャネルを作ることが分かった。次に,Almに,Caイオン結合タンパク質であるカルモジュリン(CaM)のCドメイン(CaMc)を膜外配列として連結させることで,Caイオン感受性の人工イオンチャネルが創出可能か調べた。Alm-CaMcは,Fmoc固相合成法により調製したAlmチオエステル体と,大腸菌発現系により調製したCaMc(N末端にシステインをもつ)を,pH7.1のリン酸緩衝液中で48時間反応させることで得られた。チャネル電流測定の結果,中性条件下では,Caイオンの有無に関わらず,Almと比較して非常に開口時間の長いチャネルを形成した。これは,膜外におけるCaMcどうし,あるいはCaMcと膜との疎水的な相互作用によるものと考えられる。一方pH3.0ではチャネル電流の減少,および開口時間の著しい短縮が見られた。CaMは,pHの低下(pH3.0)によって部分的なネイティブ構造が消失することが報告されており,これによって疎水的な相互作用が消失した可能性が考えられる。膜外での疎水性相互作用が,チャネル会合体の安定化とともに電流の増加をもたらしたという報告はなく,今後この現象についてより詳細に調べていく予定である。
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